ヤドクガエルの飼育日誌 vol.17 [1999年10月13日〜10月22日]




左:ベントリのオタマ。右:レウコのオタマ。

10月13日(水)
 ベントリのオタマの模様はさらにはっきりとしてきた。しかし後ろ足はあまりのびない。
 レウコのオタマは後ろ足がかなり伸びてきており、前脚の生える箇所が突っ張ってきた。だがしかし模様は出ない。地上種はこういうものなのだろうか? ともするとハイブリッドで模様が出ないのだろうか???
 どちらにしても両種のオタマの餌を人工餌に切り替えて以来、成長率が悪いように思う。やはり生クロレラにはかなわないのか……。


 このところ、矢毒に関して少々であるが将来に不安を感じている。ある程度の形、というか漠然と、数を殖やす事ができるのかどうか、殖やしたとしてその子ガエル達の価値と言うものは今とどう違っているのだろうか、中途半端な設備投資がはたしてどこまで通用したものか、そんな事が気になってしょうがない。
 気にしたってしょうがないのに、気になるのだ。


 その後、新しいビバリウムに入れたレウコが鳴かなくなってしまった。もしかしたら雄同士なのかも知れないと考え、もう一つのビバリウムから1匹移してみた。これでだめなら一度、4匹で一緒に暮らしてもらわなくてはならない。
 ベントリレッドの雄はなんだか痩せてしまい、状態が悪い。注意深く観察していると、餌を捕ろうとして伸ばした舌に餌がくっ付かない様子が見られる。いつでも餌がとれるように、沸きの良い瓶をひとつ蓋をあけてビバリウムに入れておくことにした。
 パングアナの方は、雌(だと思われる個体)の太り方が凄まじく、まるで別種がごとくの太り方をしている。もう一匹の方もそれなりに太ってはいるのだが、勝負にならないぐらい、雌(だと思われる個体)の方が太っている。
 二匹は一緒の葉腋で重なりあったりしているが産卵は確認できない。私の短い観察時間内でも幾度かその様子が確認できたので、おそらくはペアだと思われる。はやく繁殖してもらいたい。
 パングアナのビバリウムには地植えのブロメリアが無いため、カエルは全ていくつかの方法によって空中に持ち上げられたブロメリアの葉腋に入っているのだが、中でも一番暗い場所にある株を選んでいる。
 それで縄張りを争っているんだとしたら、それはかなり悲しい。




緑、だよねぇ……。

10月18日(月)
 昨日の事であるが、ついにレウコのオタマに模様が現れた。
 レウコのオタマの黒いボディにうすい緑色の模様が浮かび上がってきたのである。そう、緑色の……。
 発見したのは衛生管理部長だった。部長は常からオタマの成長を気にかけていたので、その日も自らオタマの水を替えると言い出し、細かく観察しながら世話を焼いてくれていた。
 その際、模様の異変に気付いたのだ。「なんか、緑なんだよねぇ。」と。
 私はその時、プミリオのビバリウムをセットしていたので部長に背を向けていたのだが、それを聞いて振り返った。
「まさか……」しかし、そこにいたのは昨日までレウコのオタマだったはずのオーラタスのオタマだったのだ。
 我が研究室の小さな自然は、ここまで私を裏切るのかと、私は灰色の喪失感にみまわれ、脱力し、思わず笑ってしまった。
「ははは……これはオーラタスだよ。しかも純血だね」


下からのオタマ。

 そう、まさに目の前に入るのはオーラタスのオタマジャクシ。まごうことなき緑マダラのオタマジャクシなのだ。
 竜巻きのPフェイズもどこへやら、レウコとオーラの混じりでもない、多分、純血のオーラタスだ。
 最近のオーラの動きを見ていて、オーラがペアになった事は感じていたが、まさかこの卵がオーラのものだったとは。あのレウコの連日の大合唱はなんだったか?! しかしいくらカエル達を恨んでみてもしょうがない。しょせんは私の観察不足の勘違いなのだから。
 とはいえ、私だってオーラタスの繁殖が嬉しくない訳じゃない。これで我が研究室で殖えたヤドクガエルは2種と言う事になった。このまま順調に行けば、オーラ4匹、ベントリ1匹の計5匹が今年のブリーディング数だ。去年のベントリもあわせると通算6匹のヤドクガエルを殖やした事になる。
 しかもオーラのペアの内、雄はどうやら瀬山さんちから来た「丹下」のようである。これは非常に嬉しい事実だ。
 日本国内で矢毒ガエルのF2がとれたのである。それがしかも我が研究室で。D.auratus Kawagoe Blood Lineのつながりが一歩前に進んだという事実に私はちょっとだけロマンを感じてしまう。
 できるならしかし、我が家からも早く矢毒の子を放出し、どこかで孫のうまれるのを喜んでみたい。それにしても腑甲斐ないのはやはりこの自分自身なのだが。


 今井さんがやっている掲示板の中に矢毒が売りに出ているものがあった。私は漠然とそれを見て「セアカ」=「ガラクト」と思っていた。
 しかしちょっと待て。そう「セアカ」と言えば「レティキュラータス」なのである。これは瀬山さんにメールをもらってから気付いた事なのだが、それを売りにだしている人に確認したと瀬山さんのメールにはあった。
 私もそれを聞いていそいで当人にメールを出した。すぐにレスが有り、一応レティキュラを3匹予約させてもらった。その方はレティキュラ以外にも矢毒を輸入されるそうで、日本未輸入のミスジもいると言う事で、私はそちらに期待している。
 レティキュラは瀬山さんも買うと言う事なので、もしミスジが私の期待するモルフならば、私はミスジを買おうと思っている。
 まぁ、この件については確実な事が言えるのは少し先になるだろう。


 昨日の日曜日に私は大幅な研究室の片づけを行った。それと言うのも、いきなり寒くなってしまったので外に出してあるジーベンを部屋の中に入れなくてはならないからなのである。
 そのため、現在90cmビバリウムの乗っているアングルの下をあけることになったのだ。それも早急に。


カップにいれられ、所在無さげなプミリオ。

 まずはプミリオだ。プミリオ用に新たに45cm水槽にビバリウムをセットし、90cmビバリウムの横に置く。そこは元々90cm縦置のケースがおいてあったのだが、結局完成させる事ができず、邪魔臭いオブジェと化していたので今回撤去する事にした。
 その90cmケースがおいてあった場所にセットした45cmビバリウムを置き、元のビバリウムからプミリオを取り出す。久しぶりにマジマジと見るプミリオは調子良さそうに太っている。
 元のビバリウムからプミリオを出したところで、そのビバリウムを解体しブロメリアと流木とスーパーアタッチメントを新しいビバリウムにセットした。蓋は金網だが、ラマジィに使っていた網戸の網を張り付けたハエの逃げ出さない金網である。これでプミリオに心置きなくハエを与えられる。


セットしたビバリウムと、中に入ったプミリオ。

 セットしてすぐであったがしょうがない、プミリオには我慢してもらう事にし、そのできたてビバリウムに入ってもらった。本当は1週間ぐらいカラで回しておきたいと思うのだが、現状ではなかなかそうもいかないのである。


 プミリオが終ったら今度は、新たに60cmビバリウムのセットである。ビバリウムに使用するために玄関先に出してあったADAのフチなしガラス水槽にビバリウムをセットする。そしてこれには長い間眠らせてあった60cm用のスーパーアタッチメントをセットした。
 こちらはいずれガラとビコが入る予定である。


新60cmビバリウム

 そのセットが終わり、次にレウコを一つのビバリウムに収容する事にしたので、分けてあった1匹を3匹入っているビバリウムに移した。
 4匹入ってちょっと狭いかも知れないが、早いとこペアになってもらわないとこっちがヤバい。ペアができればここからレウコを出し、ガラとビコのいる60cmに移す予定である。
 そして空いた45cmのビバリウムにオーラタスを2匹入れる。これが卵を産んだペアなのだ。
 90cmのビバリウムから捕まえようとしている時に一匹が外に逃げてしまい、ちょっとした騒ぎになったが、なんとか捕獲し、新しいビバリウムに移す。そして次にもう一匹を捕まえ、こちらも新しいビバリウムに移した。ここでジャンジャン卵を産んでくれれば言う事はない。飼い初めは「難しい、難しい」と言っていたオーラタスが繁殖してくれるなんて、これはこれで感慨深いものがある。


 パングアナはそれ以後一緒の葉腋に入ったり、なんだかチチクリあったりしているのだが産卵には至らない。多分、春先まで産まないのではないかと思い始めている。


ラマジィ。同個体の別ショットと思う。

 ラマジィは、まぁ、気侭にやっているようだ。2匹はだいたいいつも全然違うところにいるし、とくに鳴いている様子もない。
 ベントリレッドは移動のストレスからか、雄の舌から粘着力が失われ急激に痩せてしまったが、集中的に給餌することにより回復した。もう、ひやひやさせないでくれ。



10月19日(火)
 昨日の夜、オーラのオタマが一匹、左腕をはやしていた。ベントリのオタマはまだだ。
 去年のベントリは孵化から51日で前脚が生えている。今年のベントリは孵化から49日経っているが前脚の生える気配はない。もしかすると低温飼育が悪影響をおよぼしているのかも知れない。
 去年のベントリの日数を参考にすると、今回のオーラの前脚も孵化から58日めとやや遅い。餌の関係もあるかも知れないし、やはり温度も関係していると思う。これらはテストケースの少ない推測でしかないが、いずれは明らかになって行くだろう。
 前脚が生えたオーラであるが、これは最も成長の早い個体のみ、しかも左腕のみの話しで、残りの3匹はまだ生えていない。
 レウコではないと解った時点で、オーラのオタマをカップによる個別飼育ではなく、水槽を使った集団飼育に切り替えた。まぁ、現金な奴と言われればそれまでだが、現在、市場に相当数が出ているオーラタスのオタマで、私は私なりにノウハウを確立しようとしているのだ。
 今回の4匹が水槽使用の集団飼育でうまく上陸までしてくれれば今後のブリーディングにもこの方法を使って行く事ができる。


 オタマの成長に伴って、子ガエル用のケースのことも考えなくてはならない。一応、レプロ600がひとつ腐っているのでこれをビバリウムにしてオーラタスとベントリの子ガエルを飼育しようと思っている。
 これから年末に向けて、一応であるがレティキュラのケースも用意しなくてはならないし、ベントリは2ペア体制にしたいと思っているので、こちらもケースを用意しなくてはならない。
 となると、アングルをもう一つ……か。




卵。

10月21日(木)
 今日、オーラタスの卵を発見した。私の予想がある意味、いや、大いに当たったと言う事だ。月曜日にカエルを移してから3日間、ペアだと睨んだ2匹がいくらなんでもこんなに早く産むとは。
 しかし卵の様子から見ると、産卵自体は昨日行われたものだと推察する。とすると2日間か……。
 卵はうまい具合に、私が設置したBH(ブリーディングハット)の中で行われており、3箇所に設置したビニール製植木鉢のうちの一つに卵が見つかった。
 このオーラタスが入っているビバリウムでは、試験的にビニール製植木鉢の置き方をそれぞれ替えてみている。一つはプラカップの蓋の上に伏せて置き、観察しやすい場所に設置(BH-01)。もうひとつは同様のセットでブロメリアの影に隠し、人間からあまり見えないように設置(BH-02)。さらにもう一つはビニールの植木鉢だけを横向けに倒して置き、入口を枯れ葉で覆ったもの(BH-03)。そして最後に、プラカップの蓋の上に紙製植木鉢を伏せておいたもの(BH-XX)である。
 最後の紙製植木鉢のBH-XXはビバリウムの一番奥にあり、人間からは全く覗く事はできない。このBHだけは人為的にあばいたりせず、なすがままにしておこうと思う。ここで産卵が行われ、オタマジャクシが運び出された場合は、カエルから私へのボーナスと言う事だ。
 今回は2番目に紹介した、観察しにくいBH-02に卵が見つかった。植木鉢をあけてみると、薄く水を張ったプラカップの蓋の上に合計9個の卵があった。6個が一まとまりになっており、別の2個はBH内に入っていた枯れ葉の裏側に産みつけられていた。また別の1個はビニール製植木鉢の外側に貼りついていた。
 外側に卵があったので、ビバリウムの地面を覆っている枯れ葉の中にも産んだのかと思い、探ってみるが他の卵は見つからなかった。
 9個の内、6個はとりあえず順調のようだ。BH内の枯れ葉の裏側にあった2個の内、1個は死んでおり、1個は無事だ。鉢の外に産みつけられていた卵も無事だった。
 その鉢の外にあった卵も他の卵と一緒にプラカップの蓋の上に乗せ、ビバリウムから取り出した。今は室温が23度〜26度に調節してあるので、そのまま室温で保育する事にした。
 このままオーラタスの繁殖が順調に行けば、卵とオタマの育成術など、さまざまなコツを修得する事ができるだろう。



上陸間近な、オーラタスのオタマ。

 オーラタスのオタマは順調に育っている。オーラの方はほとんどの個体が前脚を生やし、一番成長している個体などはそろそろ上陸しそうな気配である。
 ベントリの方は成長が遅く、後ろ足の伸びも順調で無いように思う。身体はとても太っているのに脚がのびないのだ。SLSでなければいいのだが。



10月22日(金)
 昨日、オーラタスの卵と記録したが、オーラタスを入れる前日までレウコが入っていたので、もしかするとレウコの卵でもあるかも知れない。
 ただ、レウコについては2匹いたのを引き離したのが約1週間前であるから、1週間ほどで孵化するのが解っているので、現在の卵の状況からしてほぼオーラタスのものだと言える。ただ、物事には「万が一」があるので、一応可能性として記録しておく。
 しかし今回はほぼオーラタスであると言う種の確定と産卵が行われた状況が明確なので、98年のベントリに引き続き、産卵から変態、上陸までの記録をきっちりとつけてみようと思う。


 オーラタスのオタマは2匹がそろそろ上陸できそうな身体になってきた。週末には子ガエル用ビバリウムも作らねばならない。
 今、オタマが入っている水槽にはコリドラスなんかも入っているが、とくに問題は無いようだ。この、国籍的には符合していなくも無いがシチュエーション的にはまったく嘘クサイさまが、見ていてなかなかにオツな光景でもある。
 何とはなしにわくわくするような、懐かしい感じがするのだ。これは多分、子どもの頃にメダカとオタマジャクシを一緒に飼っていた時のような、デタラメな想い出が反応し懐かしく思わせるのだろう。
 水辺に緑色のマダラ模様をしたオタマジャクシがいる光景、それは男心をくすぐる光景でもあった。でもそういえば、田んぼにいる日本のオタマジャクシって、いつ色が変わるのだろう? 緑色をした変態途中の日本産カエルのオタマなんて、見た憶えが無い。……忘れただけかな。


 今回の室内移動が終ったら、ビバリウムにナンバーをつけてそれぞれ種別に記録をつけようと思っていたのだが、あらたに別なプロジェクトも動き出してしまい、そうも行かなくなってしまった。
 私と部長は、今年の春辺りから「そろそろ落ち着くはず、そろそろ落ち着くはず……」と思い続けているのだが、飼育部屋全体のガタガタ騒ぎはなかなか落ち着かない。
 今のところ計画だけであるが、レティキュラ導入の準備や、別プロジェクトの為、さらに帰ってきたジーベンロッキーの為に、アングルを今までの2段式から新たに4段に買い替えなくてはならない。同じ飼育部屋にあるアルミシェルフもやはり巨大なアングルに買い替えようと思っている。
 これらは全て資金繰りに応じて順次行われる予定だが、矢毒ガエル室として欲しいものは、やはり何にもましてカエルそのものなのである。
 まず、レティキュラはもちろん、今度変態予定のベントリの相手、パングアナの雄、ラマジィの追加、ガラクトの追加、ビコの追加、そして産卵してくれるレウコの雌。
 そう、その中でも一番今必要なのが、レウコの雌なのだ。


 今朝、レウコメラスを観察していると、ある雄が鳴いていた。4匹いる中でも2番目に小さい個体だ。我が研究室のレウコは大2匹、小2匹で構成されている。そのうちの小2匹が雄であると、これで確認できた。
 しかし、以前に鳴いていたのは大1匹、小1匹だった。一度カップに入れて確認したら、デカい個体のうち1匹が鳴嚢のたるみから雄だと判別できた。
 となると残るのは大1匹で、これが雌であるかどうかもかなり怪しい。やはり、個体を追加するしか無いのだろうか。



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