ヤドクガエルの飼育日誌 vol.20 [2000年1月31日]



1月31日(月)
 あれから私はやる気を失っていた。とにかくもう疲れていたし、繁殖も飼育も上手く行かないで、悩み、あがき、意気を沈ませていた。
 何故ブリーディングが上手く行かないのか、自分で理解できなかった。いくらやってみても上手く行かない。納得できぬままに、やる気だけが失せていったのだ。
 しかしついに2000年はあけ、私の矢毒飼育も3年目に突入した。
 余裕がないくせに寄り道ばかりしているので、いつも息苦しい。何をやってるんだと思いながら、しかしどんどん横道へそれていってしまう。
 そんな日々が、長く続いた。
 我が家のビバリウムは荒れ果て、手抜きを極めた飼育はガラクトを殺してしまうまでに至った。
 年末から調子の悪くなった矢毒達は、まずレウコの雄が死に(推定)、ラマシィが1匹にベントリの雄も死に(推定)、そしてガラクト2匹が死んで、ここに最悪を極めてしまったと言う訳だ。
 しかし私はこのまま消えてしまうつもりはなかった。どんなに駄目でも、とにかくくすぶり続けて、いつか燃え上がってやろうと思っていたのだ。
 そう、いつも「思って」ばかりはいるのである。


 私はここしばらくずっと困惑の渦の中にいた。
 温度が低すぎると思って温めたら、今度は高くなり過ぎ、湿度が高すぎると思ったらカラカラに干涸びてしまったりと、いっこうにはかが行かない。
 そんな毎日の中で、時間の流れに押しながされながら、私は迷いとおざなりに付き合っていた。
 そんな毎日、毎日が、ずっと続くかと思われた。そんな時、岡田さんからメールが来た。
 FMを見た岡田さんが、友人の富田さんを連れて、我が家に来たいと言うのだ。
 FMの取材があった当時といえば、私がオーラタスの産卵に恵まれ、一気にブリーディング法を確立しようと息巻いていたころだ。あの頃ですら悪いと思っていた状況が、更に悪化しているこの現状を見られるのは「恥ずかしすぎる!!」と思ったが、しかし、岡田さんに見てもらいたいと言う気持ちも強くあった。
 この状況を目の当りにしてもらい、「駄目なヤツ」と怒ってくれても構わないと思ったのだ。それぐらい、私の精神は腑抜けて、助けを求めていた。


 そして当日になり、おふたりがいらっしゃった。
 お茶も出さぬ内から、飼育部屋を見てもらうことになり、私はお二人を飼育部屋へと招き入れた。そこはとにかく、色んなものがゴチャゴチャと、息づき、這い、鳴き、食い、泳ぎしている部屋だ。
 お二人がどう思われたのか私には解らなかったが、覚悟がなかった私は岡田さんに蛇ばかり見せてしまった。はぁ、まったくなにやってんだか。
 一通り飼育部屋を見ていただいた後で、岡田さんが持ってきてくれたビデオを見ることになった。岡田さんの飼育部屋と、サーペンタリウムのビバリウムが映っているビデオである。
 ビデオは、まず何と言ったって、素晴らしさの連続だった。岡田さんのビバリウムもサーペンタリウムのビバリウムも素晴らしい。そこに棲む元気なカエル達、そして数多く育っているオタマジャクシも素晴らしすぎる。
 腑抜けになっていた私の目からも、さすがに鱗が落ちた。何かを「確信」できるほど容易くはないものの「根本的に駄目だ」ということだけははっきりと理解できた。
 餌がどうとか、温度がどうとか、湿度がどうとか、もうそんなことじゃなく、飼育そのものが駄目だ。これで矢毒が殖えるなら、誰も苦労はしねぇよってくらいうちは駄目。駄目、駄目、駄目。


 そんな事を思い知らされつつも、そこに写し出される矢毒達の姿に魅了され、私はだんだん興奮していった。
 私はもともと厭きやすい人間で熱くなるのも早いが冷めるのも早いたちなのだが、常に刺激を与えつづけることにより燃焼しつづけることが可能だということは、自分でも解っていた。
 燃焼に必要な刺激にはさまざま有り、新しい種の購入や、欲しい種の登場、友人からの叱咤、激励、訪問、懇談、さらには飼育種の繁殖など、とにかくそう言った変化や亢進が常に情熱を燃やすための燃料なのである。
 しかし、ここのところ、我が家の家計は火の車で、実弾が撃てなかった。


 そして私は、無謀でもなんでも計画をたてるのが大好きだ。
 岡田さんと富田さん、そしてサーペンタリウムに刺激され、新たに立てた計画は、自分でも惚れ惚れするぐらい魅力的で、しかし呆れるくらい無謀なものだ。実弾も無いなら無いなりに都合してやればいい。
 しかし、この計画を衛生管理部長が飲んでくれるとは思えないが、もし「GO!」サインがでたなら、我が家の矢毒飼育、というか私の精神が立ち直れる……といいな。


 当日は、我が家をあとにした後、WSへ行くことになり、みんなで葛西へ向かった。2台の車で行ったので、途中はぐれてしまったが、目的地が一緒なので問題なく到着できた。
 WSには相変わらず魅力的なカエルが沢山いる。中でも久々に入荷したトリコロールが欲しい。相変わらずと言えば、私も相変わらず金欠なのだが、松園さんになんとか無理を頼んでトリコを購入することにした。これは衛生管理部長も欲しがっていた種類であるので、購入に際しては問題無い。
 一緒に岡田さんにも薦められたミスティングシステムを購入した。少々値が張ったが、これで我が家の矢毒達の状況が少しでも好転するなら安いもんだ。
 私と衛生管理部長は、WSから程近いあーるズに行く予定だったので、WSで岡田さん富田さんと別れ、カエルは後で取に来ることにしてWSを後にした。
 松園さんの説明のお陰で迷わずあーるズに到着し、さっそく中を覗く。蛇とトカゲとヤモリのお店と言えばいいだろうか、私たちがいった時は結構なにぎわいであった。
 高価なボアコンや、大トカゲ、そしてナミヘビ。順に見ていくと、1匹のレオパが目に止まった。なんとも綺麗でいい感じの個体だが、値段はともかく性別が問題だった。「雌」なのだ。我が家に雌がいるので、雄なら欲しいところだが、お金もないことであれば、ここではグッと我慢。
 さらに見ていくと、ナメハダタマオヤモリのペアが売られていた。これは今日、岡田さんのビデオで見せてもらって、二人ともやられている種類のヤモリである。
 しかし、価格が衝動買いを許す範囲を軽く超えているので、すぐに諦めた。いずれもう少し価格が下がるかも知れないし……ヘルメットもね。
 店長さんはともかく、店員さんがあまりいい感じではなかったので、そのまま何も買わずに店を後にした。もう少しナミヘビが入れば、また来たいところだ。


 帰りがけにWSへ行き、トリコを3匹選んで帰宅。
 途中、衛生管理部長の体調が悪化し、部長は仮死状態だった。
 そしてなんと、帰って袋を開けてみるとせっかく連れ帰ったトリコが1匹ノビていた。なんとも残念な結果である。もしかするとホカロンが熱すぎてノビてしまったのかも知れない。衛生管理部長が、体調不全で道中何もできなかった自分を今さら呪っていたが、それはそれ、言ってもしょうがないことなのである。
 松園さんに電話でそれを告げると、とても悔しがっていた。この悔しがるのが松園さんのいいところなのである。なんで死んでしまうのか? と悔しがるのが、とっても松園さんらしい。多分、損得勘定ではなく、純粋にカエルが死んでしまったことが悔しいのだろうと私は勝手に信じている。
 死んでしまったカエルは保証してくれると言うことで、電話を切り、私はカエルと一緒に購入したミスティングシステムのセットに取り掛かった。
 溜め水用水槽を洗い、アングルの上段に乗せる。そこへポンプを置くことを想定して、ノズルをセットしチューブを繋ぐ。最後に、ポンプに繋ぐチューブが足りなくなりそうな時は焦ったが、なんとか間に合った。
 さっそく作動させてみると、轟音凄まじいながらも、細かな霧の質・量ともに満足できるものだった。
「うんうん……」などと満面の笑みで眺めていると、なんとジョイント部分の差し込みが甘く、途中で水が吹き出してしまっている部分があった。すぐにポンプを停止し、ペーパータオルでこぼれた水を拭き取った。
 ジョイント部分のチューブを更にきつく押し込み、他の部分も洩れていないかチェックして、再度スイッチ・オン!!
 今度はさっき洩れた場所も洩れること無く、上手く行った。
「プシーっ!!」っと出る感じがなんともグッドで、私たちが行くたんびに何度も実演していた松園さんの気持ちが解ってしまった。私も今度友だちが来たら何があったってコレを見てくれと言うだろう。


 今回、岡田さんと富田さんに来ていただいて、私は本当に良かったと思っている。
 手前勝手きわまりないが、なにしろやる気が出てきた。
 またいつか復活した我が家を見てもらいたい。今度こそ恥ずかしくないものを。
 最後になるが、こんなヤドクガエルと何の関係もない飼育日誌を読んでくれているあなたにも「ありがとうございました」と、お礼を言わせていただきたい。
 次回からはもうちょっとはまともな「ヤドクガエル」の飼育日誌をお見せしたいと思う。





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