ヤドクガエルの飼育日誌 vol.21 [2000年2月1日〜2月4日]



2月1日(火)
 一昨日連れ帰ったトリコは、生き残った2匹とも元気でやっている。餌のハエを入れるとすぐによってきて食べてくれている。
 岡田さんが見せてくれたビデオで思ったのは、地上種の陽気さだった。なんで彼らはあれほど姿を見せているのだろう? レウコも、オーラもまったく隠れる様子が無くビデオカメラに映っている。
 我が家でも、衛生管理部長の御友人からビデオカメラを借りて撮影に望んだことがあったが、矢毒蛙がまったく姿を見せてくれず、まるでツマラナイ映像になってしまったという苦い経験がある。まぁ、根本的に駄目なのだから、しょうがないといえばそれまでだが。
 ビデオで見せてもらった岡田さんのビバリウムとサーペンタリウムのビバリウムは凄くカッコ良かった。これは河村さんも言っていたことだが、うちはごちゃごちゃと色んなものを入れ過ぎなのだ。これからもっと洗練しなくてはならない。
 そんな中、オーラタスの産卵がまた始まった。現在は、一月に2回、各6〜8個のペースで産んでいる。昨晩発見したクラッチはまだ産みたてと言う感じで、数は6。なんとか上手く育って欲しいものである。
 前回産卵分で、今現在オタマ水槽で泳いでいる1匹は最悪の状況下で孵化した1匹だ。この1匹が元気に育っていると言う現実は、私の考察などおよびもつかない原因があると言うことを思い知らせてくれた。
 細かい話になるが、この卵の孵化までの経過を記しておく。
 この卵はBH-01に産卵されていた。しかしそれを私が知ったのはオタマがうまれる寸前になってからだった。それと言うのも、BH-01をチェックしたその時に、BHの内側に張り付いていた卵に私が気付かず、BHの蓋を持ち上げた瞬間に卵はビバリウムの地面に落ちてしまっていたのである。しかもそこはいつも最高最低温湿度計のはいった容器を置く場所で、結果卵は上からその容器の底で密閉されているような状態になってしまったのである。
 少し身近なものに話を置き換えると、テーブルの上に卵があり、その上に味噌汁の入ったお碗を置いたような状態である。お碗の中に入っているのが温湿度計ということだ。
 次の日に温湿度計の容器を持ち上げた時にも、私は卵の存在に気がつかなかった。その次の日も、また次の日も……。
 そうやって幾日かが過ぎる内、クラッチの中のいくつかが死に、腐敗して色が白くなり初めて、やっと私はその存在に気がついたのだった。驚いた私が卵をチェックするとその中で1匹だけオタマに育っているものがあった。
 その卵が育っているあいだ、ビバリウム内の最高温度は30℃近くになり、卵の置かれている状況も、地面の上にあるから水浸し状態だったし、容器を上から乗せられ密閉されていたのだから、湿度とか通気なんて問題外だった。もちろん、孵化率が悪かったのは事実であるが、そんな中でも生きるものは生きるのだと知らされた。正直、「手に負えない……」とその時思ってしまった。
 それから私はオタマを小さなプラカップに移し、ビバリウム内でしばらく飼育することにした。生まれたオタマは小さなカップの中で元気にしている。生まれてから1週間ぐらいは餌を食べないということで、カップに入るあいだは餌を与えず、1週間経ってからオタマをオタマ飼育槽に移した。
 この飼育槽ではいい感じに水草が伸びたり枯れたりしているので、オタマが自然に育つかどうか試している。人工餌を与えず、落ち葉や水草や、自然に生えたコケを食べて育つかどうかを見たいのだ。
 あれから3週間ほどたつが、オタマの姿は時々見られる。


 昨日考えた予算案は、あまりにも無謀すぎて衛生管理部長の審査を通らなかった。まるで駄目だった。
 しょうが無いので、少々方向を修正し、ある程度の所で妥協しようかと思っている。
 それというのも、明日の2月2日、レティキュラータスが入ってくると言うのだ。それを購入し、飼育設備を多少拡大しようと言うのが、今回の計画である。
 そう、レティキュラさえ本当に入ったのなら、計画は進行するのだ。ただ、去年の暮れから「入る、入る」といって入らないこの蛙、はたして今回はどうなるのだろうか? やはり現物を見るまで、疑惑は晴れない。


 ミスティングシステムはかなり楽しい。もともとが乾燥気味で、しかも部屋中が乾燥していてすぐに水分が失われる我が研究室では、毎日5分程度のミスティングは問題無く行なえる。本当は、排水の穴を開けて水が溢れないよう処理しなくてはいけないのだが、手動でミスティングしている内は大丈夫だ。
 このビバリウムケースの穴開けも岡田さんに頼むことにした。これを機にビバリウムシステムの改変を行おうと思っている。そう、スタイルは常に進化するものなのであって、停滞は腐敗を産む。甘んじると言うやつだ。「こんなもんでいいや」と思いながら何かを欲しがっている場合では無く、つねに進行を求め、そして進まなくてはならない。完成には程遠い状況である我が家はなおさらに。




2月2日(水)
 ここ1、2日のうち、レウコが姿を見せるようになってきた。やっとビバリウムに慣れてきたのだろう。近い内にまた新しいビバリウムをセットして移そうと思っているので、せっかく慣れたのにちょっと可哀相な気もする。とはいえ、軽く3ヶ月程度は準備期間としてかかるであろうから、環境改善としての移動であればそうでもないか。
 今は飼育部屋の真ん中に室内温室があってビバリウムを鑑賞できる状況に無いし、ケージの移動を行うにしても困難である。春になり、暖かくなったら鳥を温室から出すことができるので、矢毒ビバリウムの新設はその後と言うことになるだろう。
 それまでにできることと言えば、熱帯魚の移動と新しいアングルのセットだ。これらを徐々に進めつつ、計画を煮詰めていこうと思う。
 オーラタスの卵はその後順調に発生している。せめてこのままオタマになるまで無事でいて欲しい。今はビバリウム内のBHに入れたままにしてあり、濯ぎはビバリウム内の循環水を使用して行っている。




デブのパングアナ

2月3日(木)
 昨日の晩、私はさっそく計画の実行にとりかかった。計画段階としては「計画-02の第一段階-その1」という、最初の一歩だ。
 その一歩に含めた実行すべき項目の内、約3分の1程度が終了した。内容は、ヤドクガエルの移動である。
 まずビコロール2匹をレウコのいる90cmビバリウムに移した。意外と動きが素早く、捕まえるのに苦労させられたが、なんとかカップに追い込み、無事に移動できた。入れてすぐにどこかへ姿を隠したようで、それ以後今朝になるまでビコロールの姿は見えなかった。
 次にビコロールが入っていた60cmにラマシィとベントリのパングアナを移す。
 すでにタイマーでビバリウムの照明が落ちていたので、タイマーの設定を修正して照明をつけ、蛙を探した。ラマシィのビバリウムでは、行方不明になった個体が入るので、そいつの捜索も兼ねている。
 いつも姿の見える1匹を探しながら、ブロメリアを抜いていく。地植えにした株はずっと水に浸かっていたため根元が腐り落ち、逆に背面のヤシパネルに突き刺した株は乾燥して葉がまるまっている。
 そんな調子の悪い植物達を全てビバリウムから取り出し、次に流木をとりだすと、ケースの中には床材の土とヤシパネルだけが残った。このラマシィのケージは背面のヤシパネルが変型して隙間ができているため、どうやら蛙はそこに隠れているようだった。
 そっと背面のヤシパネルを取り除くと、ガラス面に張り付いている蛙の姿を発見した。そいつをカップに追い込み、60cmのビバリウムに移した。さらにケースの中を見ていくと、行方不明蛙の姿があった。完全な白骨状態で。
 ラマシィの白骨死骸はケースの奥、向かって左側の角に張り付いていた。ヤシパネルとの隙間に挟まって抜けられなくなり絶命したのだろう。残念だが、しかし消息が解ってよかった。
 次にラマシィのお隣であるパングアナのビバリウムを同様の順序で解体していく。いつも隠れている個体がブロメリアの葉腋から出てこないので、そのブロメリアごとラマシィの待つビバリウムに移した。



動かない

 残るデブの一匹は、捕獲がてら撮影することにした。なんとこいつ、樹上棲種のくせに太り過ぎでガラス面が登れないのだ。それどころか跳ねるスピードも距離も、その体重がたたって本来の5分の1程度のパフォーマンスしか発揮していない。
 見た目はまるでツノガエルの仲間のようだ。


 撮影後、この個体もラマシィのいるビバリウムに入れた。60cm水槽にアタッチメントをセットしたこのビバリウムなら3匹入れても大丈夫だろう。
 次に私は、後日トリコロールを入れるためのビバリウムをセットした。このケースはオーラタスの子ガエルを育てたケースだ。ブロメリアとヤシパネルをセットし、水を足してセットは完了だ。
 さらにベントリレッドを入れる予定のビバリウムに水を足して入る時、ふと聞いたことの無い鳴き声が耳についた。
「鳥?! ……じゃ、ないよな」なんて思って振り返ると、続けざまに「キュッリ・リ・リ・リッ……」「キュッリ・リ・リ・リッ……」と文字表記不可能な鳴き声が聞こえた。結構な音量である。ちょうど、フタホシコオロギぐらいだろうか。
 私は「コオロギかな?」と思い、コオロギケージの方を見た。するとその時、確かに鳴き声は左方向、つまり、たった今ラマシィとパングアナを入れたビバリウムから聞こえて来たのだ。
 瞬間的に胸を高鳴らせた私は、蛙を驚かさないようにかがんでケースに近づき、中の様子をうかがった。すると、そこにはラマシィとデブパングアナの姿が。
 なんと、鳴いているのはラマシィだったのだ。
 ラマシィは、自分の3倍ぐらい体重が有りそうなパングアナのまわりを回りながら、鳴き声をあげている。
「ら、ラマシィだ……」
 私はあっけにとられて、自分の目と耳を疑った。しかし、別の角度から見てみても鳴いているのはラマシィのようだった。万が一ラマシィが鳴いていないのだとしたら、鳴いてるのはデブのパングアナと言うことになる。
 しばらく観察を続けたが、やがてパングアナがどこかへ行ってしまい、ラマシィも静かになってしまった。
 これからしばらくの間ここで一緒に暮らす2種、禁断の愛は実を結ぶことができるだろうか? 非常に楽しみである。




2月4日(金)
 昨晩も、仕事が終って家に帰りついてからヤドクガエルの移動を行った。今度は、一昨日セットしたビバリウムへトリコロールを移動する番だ。
 到着時、1匹落ちてしまっていたので残った2匹の状態が心配だったが、ビバリウムを探ると元気の良い2匹が見つかった。
 途中思ったのは、結構ビバリウムの土に小さな虫がいっぱい居るなぁ……ということだった。このトリコのいるビバリウムは以前レウコが入っていたビバリウムだが、レウコが90cmに移ってからは住人の居ない状態だった。当然、ハエも入れていない。のにもかかわらず、トリコロールが来てから与えた量以上のハエがわんさか居るのである。そしてその他にも、土を掘り返すと色々な小さな虫が数多く居る。
 いつもハエが不足した時に、なぜ2〜3日餌を入れなくても蛙があまり痩せないのか? と疑問に思っていたが、こういうモノを食べているんだと納得できた。次のビバリウムに土を入れないでみようと思っていたが、これを見ると改めて土の重要性も感じてしまう。
 どうしたものか?


 今朝になると、ラマシィがまたパングアナのデブに言い寄っている様子が見えた。結構、熱心に誘い掛けている。しかしすぐにでも産みそうな身体をしているわりにはパングアナの方が乗り気じゃ無いようだ。これが乙女心の微妙なところなのだろう。
 もう1匹のパングアナは姿が見えない。一昨日隠れていた場所は、昨日ラマシィに取られていたし、どっかでイジケてないか心配だ。





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