ヤドクガエルの飼育日誌 vol.23 [2000年2月14日〜2月22日]



やっぱりレティキュラだったとさ……


2月14日(月)
 たった3日で、状況が急変した。
 ワイルドスカイの松園さんに連絡をとったら、あの蛙がレティキュラータスだと言うのである。
 私は一瞬「?」だった。ベントリじゃ無かったの?と――。しかし、そんな私の戸惑いをよそに、あの蛙はレティキュラータスとして販売されているのであった。
 金曜日に画像付きメールを送った河村さんに連絡し、この話をすると「あれはレティキュラでしょ」と言われた。まだ迷っていると言う彼を強引に説き伏せ、翌日の土曜日にワイルドスカイで待ち合わせることにした。


 そういった動きの前に、金曜日にはケースの穴あけを行った。岡田さんがさっそく来て下さり、私のケースに加工をしてくれたのだ。この有言実行ぶりは凄いと思った。私はよく「何々をしましょう」と言っておいてやらずに延ばし延ばしにしてしまう事があるので、我が身を振り返り反省することしきりだった。
 約束通り午後1時頃に我が家に到着された岡田さんに、ひと休みしてもらってから二人で一緒に作業を開始した。ひと休みの間に「あれがレティキュラかもって事になってるんですよ」とか、色々話しをした。
 岡田さんが持ってきてくれたドリルでガラスケースに穴をあける。なかなか踏ん切りがつかない作業であったが、やってみると思いのほか簡単だった。いや、作業自体は単純で簡単なのであるが、同じ体勢でずっとドリルを押さえ続け、なかなかあかない穴を少しずつ掘っていくというのは、忍耐力のいる作業だった。ケチな私は、この作業を他人に無償でやってあげる気にはなれない。さすがは岡田さんである。
 2個のケースに穴をあけてもらったあと、やり方のコツを教わって、道具をお借りし、残りは自分であけることにした。こんな作業を5回もやってもらう訳にはいかない。もう、充分お世話になってしまっているのだから。
 岡田さんが帰られた後、残りの3つに穴あけをし、背面にヤシパネルを貼ってこの日の作業を終了した。あとはヘゴの棒をシリコンで張りつければ基礎工事は完了である。
 はたして、私にも緑が充満するビバリウムを作れるだろうか?


 一夜あけて土曜日、午前中に買い物を済ませて一回家へ戻り、ヘゴ棒とヘゴ板を切ったりして下準備をした。その後、ワイルドスカイへ行き河村さんと合流する。
 店に到着すると河村さんはすでにレティキュラを選んでおり、いっしょに山岸さんも選んでいるようだった。
 河村さんはなんだかやたら興奮気味で、その場を仕切っているようだった。私はこの時点でもまだ、この蛙を本当にレティキュラだとは思い切れていなかったので、その熱気に少し引いてしまった。
 私はとにかく早く帰ってケースのセットをしたかったし、我を剥き出しにして取り合うでも無くしかしピリピリと張り詰めたこの空気が嫌だったので、最初、「俺は、お二人で選んだ残りで良いですよ」と言った。
 だが、それでも状況が遅々として変わらなかった。どうやら「三竦み」みたいな状況になってしまっているのである。みんな人が良いのだ。……多分(笑)。
 そこでまず、河村さんの提案通り、みんなの目に止まった個体をタイプ分けしながら1匹ずつカップに取り分けようと言うことになった。
 ベタ色タイプとスポットタイプとストライプタイプ、それぞれみんなで選んで、総数をみんなが買う数にする。
 それが選び終った後で、「さぁ、今度はどうしよう?」ということになった。当初、話し合いで解決と言うことになったのだが、誰も何も言わないので、私は状況を打破するべく「みんなで一斉に、欲しい個体をひとつ選んで指を差そう!」と提案した。ベタタイプは3匹しかいない。それを3人でわけるのだから、話は単純なのだ。そしてさっさと「俺は、コレ!」と指差した。
 河村さんと山岸さんは私が選んだのとは別の個体が欲しいらしかったが、二人の欲しい個体が一緒だったので、また話がストップしてしまった。
 私は「じゃぁ、ふたりともこの個体はいらないんですね」と言って、自分が選んだ個体をもらっていこうとしたが、河村さんに止められてしまった。「ちょっとまて」と。


私が選んだベタ色タイプ

 いいかげん、蛙をカップに入れてから時間がたっている。こんなことでぐだぐだしてもしょうがないではないか。
 で、最終的にじゃんけんすることになった。そもそも、河村さんが最初から言っていたのが、この「じゃんけんで勝った順に選ぶ」というものだった。私はなんでもいいから早くしたかったので、それで良いと言い、エキサイトする二人に巻き込まれる形で山岸さんも承諾してくれた。今になって、「あんな風に強引に話を進めて良かったのかなぁ……」と後悔したりしている私はやはり卑怯者だろうか?
 さて、じゃんけんである。
 大の男が3人も集って蛙を巡ってじゃんけんをする。なんて阿呆らしくて素敵な光景なんだろう!
「さいしょはグー、じゃんけんぽん!」
 私は、私のじゃんけん必勝法に従って、「チョキ」を出した。
 トキタ=チョキ、山岸さん=チョキ、河村さん=パー!!
 河村さんが負けたのである。
 あんなにエキサイトして、色々考え、みんなが幸せになるように、そして自分も納得できるようにこの場をトータルで仕切っていた河村さん、その河村さんが負けたのである。
 そして次に私と山岸さんでじゃんけんをし、最終的には山岸さんがじゃんけんに勝ち、最初に選ぶ権利をえた。河村さんはすでにふて腐れて、子供のようにスネ、みんなに悪態をついていた。


ありがちなショット。

 そんな楽しい時間を過ごした後、我が家にやっと、念願のD.reticulatusがやってきた。本当に感慨深い。この蛙を欲してやまなかった初心の頃を思い出した。胸が「じ〜ん」と熱くなる。そして、さっきの河村さんの事を思い出すと「ふひひ……」と笑ってしまう。
 私はまず、用意してあったプラケに5匹を1匹ずつ分けて様子を見ることにした。



 プラケの中身は湿ったミズゴケに小振りのブロメリア、レッドオブリオを1〜2株だ。それをシートヒーターで下から加温し、照明を付けて気中温度もあげる。
 緑の中の赤い蛙――美しい。本当に。これが毒々しいと思う人もいるだろうが、その毒々しさこそが美しいのだ。
 わたしはレティキュラータスを見ていて、ふと、アフリカンシクリッドのいわゆる「アーリー」を思い出した。あのメタリックなブルーも素晴らしいものだった。あの蒼とこの赤、人間の目が「色」というものを認識できて本当に良かった。そして、そんな蒼やこんな赤を見る機会に恵まれて、私は本当に幸せだ。








 ずっと眺めていても飽きることが無い。私はまさに夢見心地で、長い時間この小さな赤い蛙を眺めていた。
 来たばかりの蛙たちはとても疲れているようであまり動かなかった。エサをやっても食べそうに無いので、その日は何もせずなるべく静かにしておくことにした。



個別飼育ケージの様子。

 レティのセットが終った後、再びケースの改造作業にとりかかった。午前中に切っておいたヘゴ棒をシリコンで張り付けるのである。
 今回は、背面全部をヘゴ板にする予算がなかったので、以前に使っていたヤシパネルを乾燥させそれを背面にシリコンで張り付け、そのヤシパネルの上にヘゴ棒を適宜張り付けることにした。この棒の部分にウィローモスを活着させる予定である。
 金曜日に岡田さんから、岡田さんの行っているセット法を教えてもらったので、5個のケースのうち三つはその方法をまねさせてもらおうと思った。まぁ、ただ単に、ヘゴ板を買う資金に無理があって残り二つができないというだけであるが。


 そしてさらに一夜あけた日曜日、レティキュラの様子を見ると、全ての個体が急激に痩せてしまっていた。私は昨日エサを与えずにおいたことを後悔した。ハエを嫌がって動き回ってしまう事を考えたのだったが、これは的外れな考えだったのかも知れない。



 そこですぐにレティキュラの移動を考え、まず、45cmケージに入っているベントリ2匹をラマジィとパングアナのいる60cmケースに移すことを決めた。ベントリを出した後、45cmケージにレティキュラを入れるのだ。
 ベントリを捕まえるために、45cmケージからブロメリアを取り出し、シェルターも取り出す。2匹とも地上種かと思われるかのような場所に隠れていた。流木の下だ。だがこれは、私がブロメリアを抜いているあいだに隠れたからかも知れない。
 2匹を無事に移動し終わり、今度は45cmを再セットして、レティキュラを移す番だ。
 プラケの中のレティキュラをブロメリアに潜っているものはそのまま、外に出ているものはカップに乗せてビバリウムの中に移す。本当に、宝石のように美しい。まぁ、私自身はそれほど本物の宝石の方を美しいとは思わないが。
 その濃いオレンジの色彩はブロメリアの濃緑色に素晴らしく映え、さながら生きた宝石達の祭典のようだ。こうなると必然的にシャッターを押す回数も増える。
 そうやって撮影しているうちに、あることに気がついた。
 レティキュラの肌は粒状になっているのである。これはベントリには無い特徴だ。ベントリは私のカメラでマクロ撮影してもその肌は「ツル」っとしているが、こちらのレティキュラはご覧のとおり粒状である。
 私は今さら興奮して、ひとりで「こいつは、レティキュラだ!」なんて盛り上がってしまった。本当は、いままで少し疑っていたのである。ベントリなんじゃないかと……。
 このことを河村さんに電話で話したが、彼は「あまり粒は目立って無いし、そんなの見なくてもこいつはレティキュラだ」と主張した。
 どうやら、じゃんけんで負けたことをまだ根に持っているらしい(笑)。
 しかし、本で調べてみると少し分かったことがあった。プミリオもファンタもイミテーターも結構粒状の肌をしており、ベントリはほとんど粒の目立たない肌をしているのだ。
 私が本で見た限り、粒の目立ち度はレティキュラ>イミテーター>ファンタ>プミリオだった。ベントリはプミリオよりも更に目立たず、多分普通のカメラや肉眼では捉えられないのでは無いかと思われる。
 まぁ、確かに、言われてみれば模様が全然違う。でも私だって、最初から「これはレティキュラだ」と思い込むほど、ベントリと違うとは思っていたのである。


 とにかく、今朝になってみると3匹は生存が確認できた。昨日はコオロギが届いたのでそれを大量に与え、さらにハエの瓶も1本入れてあるので、良く食べて早く太って欲しいものである。
 余談ではあるが、このケースには自作のドレンがついていて、そこから少し水を抜いていこうと思ったら、眼を離した隙に全ての水が床に流れ出してしまった。まったく、これでは先が思いやられると言うものだ。
 岡田さん、どうやらうちは壁に穴をあけて外に排水するしか無いようです。私の性格的に……。




2月18日(金)
 レティキュラの様子を確認しようとしているのだが、姿を見せてくれる機会が少ないのでしっかりと確認できないでいる。いままで観察した中での最高確認個体数は3匹だ。
 今現在、我が研究室の蠅不足は深刻で、ほとんど蠅がいない状態である。




2月21日(月)
 昨日は、ビバリウムのリセットを行った。岡田さんに穴あけをしてもらったケースを再セットしなおしたのである。
 本当はビバリウムを全てアングルからおろしたので、ついでにアングルを解体し、使用できる段を上段に替えようかと思っていたのだが、時間と体力がなくて無理であった。
 先週はずっと仕事が忙しく、しかも職場を変わったため金曜日の夜に盛大な送別会を夜通ししていただいたので、土曜日は回復につとめ日曜日だけで溜まりに溜まったすべての生物のケアとこのビバリウムのセットを行わなければならなかった……という訳で、時間と体力がなかったのだ。
 日曜日午後からセットを開始し、終了したのはPM11:00。最後に水を入れ、玄関のアクアリウムからウィローモスとミクロソリウムを抜いてビバリウムに植えた。2階によけてあったブロメリアをそこに植え足してゆく。
 事前に、ヘゴ棒に穴をあけておいたのがまんまとはまり、結構な底面積を確保しつつブロメリアをたくさん植えることができた。これであとはシェルターのセットと、産卵床のセットをするだけである。
 本当はせっかくケースにドレン穴をあけたので、水を溜めない方式にしようかと考えたていたが、実施の際に不可能だということが分かったので急遽、底面濾過器をセットすることにした。
 方式としてはワイルドスカイの松園さんのやり方とサーペンタリウムの首藤さんのやり方をかけ合わせたような方式になったと思う。
 いずれは、ドレンを塩ビパイプで繋いで室外に随時排水できるシステムにしようと考えているが、とりあえず思ったようなセットにはなったのであとはこれで上手くいってくれるように努力するばかりである。


 心配だったレティキュラはなんとか1匹は生き残っているようである。他が死んだという訳ではないのだが、とにかく姿が確認できたのはここ何日かでその1匹だけなのである。
 蠅もなかなかわかないし、ピタリ適温をいくら使っても最低温度は21度だし色々と心配は尽きないが、なんとか生きていてほしい。




2月22日(火)
 実は、昨日から新しい職場に移り、そこで仕事をしている。まだ落ち着かない状況であるが、飼育日誌をつけたい気持ちを抑えることができず、仕事の合間でこうやってテキストを打ち込んでいる状態だ。
 そんな私の事情はさておき、うちのヤドク達である。
 昨夜は新しくセットしなおしたビバリウムの調子を見ながら、調整を行った。
 ブロメリアの数を更に増やし、ウィローモスの位地を変えたりする。背面に貼ったヤシパネルが水を吸い、水位が下がっていたので水を足し、ミスティング・システムのノズルの向きも調節した。



太り過ぎのパングアナ。

 ラマシィとベントリレッドとパングアナが入っているビバリウムでは、相変わらずラマシィが陽気に歩き回っている。彼等の行動を見ていると、野生では毒性に差があって隠れたり隠れなかったりするのだろうか?と想像してしまう。
 三種を分けていたときよりどの種も調子がいい。やはりこのビバリウムの方がセッティングが正しかったのだろう。
 しかし、買い足したベントリレッドはやはりメスだったようで、二匹が仲良くしている様子はあまり見られない。さらに、パングアナには言い寄っていたラマシィがベントリレッドには見向きもしないのが面白い。


 90で一緒に暮らしているレウコとビコはなかなかの調子のようだ。今はまた湿度が低い状況にあるので、新しいビバリウムで一気にやる気をだしてくれるといいのだが。
 オーラタスとトリコの入っている60では、トリコの調子があきらかに良い。オーラタスが少し痩せてきたのに比べ、トリコはかなりグラマーになってきた。早めにオーラタスを新しいビバリウムに移そうと思っている。
 この60でオーラタスが生んだ卵をカップにとりだし、開発中の孵卵器に入れっぱなしにしておいたら7個のうち2匹が無事に孵化した。まるっきりほっておいてこの数が孵化するのならあれだけの努力をしていた頃が馬鹿馬鹿しくもある。やはり、しばらくカエルが休んだのが良かったのだろう。今後また産卵が続き、オタマの発生率が悪くなったら一度ペアを分けるなりしてメスを休ませるようにしてみようと思う。
 てなことを言いながら、これがまた上陸する頃になってトリコのオタマだと判明したら笑い話にしかならないが。




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