サソリの飼育日誌 vol.01 [1999年2月27日〜3月3日]
憧れのサソリ「イエローファットテール」。
3月3日(水)
我が研究室は、最近「ついに」ラッシュである。
ちょうど一年前の今頃、私は手始めに矢毒ガエルを飼い始め、やがてタランチュラが飼いたいだの、サソリが飼いたいだのと騒ぎ続けていた。1年間で、それらのうちのほとんどを実現させてきたわけだが、まったくこんなことになろうとは、有毒研究室開設当初は考えられなかったことであり、いまさらながらに飼育部屋をみまわしてみると、「よくもまぁ……」という感慨に近い感情まで沸き上がってしまう始末である。
昨年一年間、各種様々本当に色々な事が起こり、今も継続してザワザワと私の身の回りに渦潮のようにうねっている。本当にこのままでは7月だか9月だかに恐怖の大王がおりてきてしまうんではないかと思うほどの急速転回が。
前置きが長くなったが、ついに、サソリが我が研究室にやってきた。
木陰でバカンスを楽しむイエローファットテール。
猛毒と名高いイエローファットテール・スコーピオンAndroctonus australis。細く鋭いハサミ、砂漠の砂に溶け込むようなサンドイエローの身体、禍々しい太さを誇るその尾。
いわゆる乾燥系と呼ばれる特長を持つ猛毒のサソリである。
このYFT、実は鶏冠さんからの頂き物で、事情は長く深い話になってしまうので省かせていただくが、プレゼントしてくださった鶏冠さんには深く感謝している。彼がいなかったら、当研究室では、タランチュラもサソリも飼育することができなかっただろう。
さて、実際の飼育に関しては、噂通り手間がかからない。
ケージは絶対に逃げ出すことのないような物を用意してやれば、あとのセッティングはいたって簡単なものだった。この辺のテクニックは、秋山さんのHPに詳しく紹介されているので、それを見習わせていただいた。(秋山さんのHP内「さそりをかおう」)
接写も命懸け?!
基本的には、ケージ内に1箇所湿った場所を用意し、あとは乾燥させておけば良く、ちいさな水入れをセットしたら、霧吹きも必要無いようである。
床材には市販の「砂漠の砂」というのを使用しているのだが、黄色の砂がなかったのでしょうがなく赤い砂を敷いている。緑が欲しいな、と思い小さ目のチランジアを1株植え、シェルターはトカゲモドキでも重宝している紙製の植木鉢を適当な大きさに千切って設置した。
餌はコオロギであるが、やり過ぎると消化不良で死亡することがあるので、少な目を心がける。今のところ、サソリの体長は尻尾を除いた大きさで2cm弱。S〜Mサイズのコオロギを1週間に1匹ずつ与えている。
毒針で刺し、動きが鈍くなったところで食う。
驚いたのはその運動量で、昼間は全くシェルターから出てこないものの、夜になると活発に動き回っているらしく、ケージ内の床面いっぱいに小さな足跡がついていた。
そして、シェルターの下には好みの大きさ、深さで穴が掘られており、先行していたイメージよりはずっと働き者で、しかも慎ましやかなうえに勤勉なようである。
そんな彼ではあるがコオロギを殺す瞬間は惜しまず毒を使う。鶏冠さん宅のYFT(同サイズ)は、殴り付けるようにして何度も毒を注入したそうだが、我が家の個体は「……ス」と優しく針を刺す程度であった。逆に、細いハサミは「これほどの力が?!」と思うほどホールド力に優れ、コオロギがどんなに暴れても放してしまうようなことはなかった。
食う。
毒で麻痺しながら「ムリムリ……」と食べられていくコオロギを見て、少々可哀相な気もしたが、案外「毒」に冒されてから食べられる方が、元気なうちから食べられてしまうより、痛みや刺激が一瞬で済む分「優しい」のではないか、とか考えてしまった。まぁ、コオロギがどれほどの痛みを感じることができるのか、または感じているのかなんて解る訳がないし、解りたいとも思わないのだが。
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