タランチュラの飼育日誌 vol.01 [1999年3月12日〜3月16日]




来た当時のピンクトゥー。

3月12日(金)
 公開しようと決心した矢先にピンクトゥーが死んでしまった。理由は解らない。1週間ほど拒食していたのでついに脱皮かと思っていたのだが、期待は脆くも崩れ去った。
 秋山さんにも鶏冠さんにも申し訳ないことをしたと思う。そしてなによりピンクトゥーにも。
 ここ数日、飼育生物の死が立て続けに起こり、かなりヘコんできた。飼育生物が死ぬ、その一番の理由はなんにしても飼育生物の増加にともなう、各個体への観察不足だと思うから、余計にヘコむのだ。
 週末には新たなタランチュラが我が研究室にやってくる。Geneさんとみるかし姫さんのはからいで、ウサンバラが1匹とストレイトホーンド1匹だ。みるかし姫さんのアンティルツリーはその日に引き渡しを行うかどうかまだ決まっていない。
 飼育部屋の片づけは衛生管理部長の活躍で驚くべき早さで進んでいるが、ケージそのものの配置替えや改善は未だ手付かずのままである。
 はぁ……なんだか、あまりに小さい死骸が「コロン」と悲しすぎて、思い出しただけで暗くなってくる。今日は、この辺にしておこうかと思う。




ウサンバラのお尻。まだ細い。


こちらはストレイトホーンドのお尻。

3月15日(月)
 昨日、みるかし姫さん、鶏冠さん、でんぱたんちさんたちと集まり、今回輸入されたタランチュラをそれぞれに分けながら、同時に飲み会も行った。
 始終蜘蛛話で盛り上がると言う一種特異な飲み会ではあったが、楽しい時間を過ごさせていただいた。なんだか解らないことばかりで、私なんかはちょっと恥ずかしかったりはしたのであるが。
 ……で、ついに2匹のタランチュラがやってきた。
 ウサンバラオレンジとストレイトホーンド。想像していたよりも遥かにカッコイイ。……カッコイイというか、私のツボにはまる魅力を持っていると言った方がいいだろうか。とにかく一発で気にいってしまった。
 ウサンバラ、ストレイトホーンドとも、いわゆるバブーンスパイダーと呼ばれるグループのタランチュラで、しかもこの2種はかなりの元気者らしく、私のような初心者を心配して、みるかし姫さんから扱いについての注意事項を教えて頂いた。
 とにかく動きが早く、飼い主がその行動パターンに慣れるまでは注意が必要との事だった。
 飲み会が終って家に辿り着き、さっそくケージをセット。
 余っていたプラケに土を入れ、適当なサイズのコルクシェルターを設置して、タランチュラを入れる準備をおえる。
 しまちゃんが脱皮直後で移動できないため、とりあえずホーンドバブーンには小さなプラケで我慢してもらい、ウサンバラの方に適当なサイズのプラケを使用した。入れたばかりの土が少々湿っているので心配であったが、エアコンの近くに置けば乾燥するだろうと思い、そのまま飼育を開始することに決めた。
 明日にでも大きなプラケを買ってきてそちらにしまちゃんを移し、その空いたプラケにホーンドを移そうと思う。
 2匹のタランチュラをそれぞれプラケに移すため、45cm水槽を用意した。水槽の中に土をセットしたプラケを置き、さらにそのプラケにタランチュラの入ったカップをいれ、プラケの中で慎重にカップを開ける。ウサンバラの様子を見ながら、少しずつ蓋をずらす。
 動きは素早かったものの、うまくこちらの誘導に従ってくれ、プラケに入れたコルクシェルターの下に隠れてくれた。一安心して蓋を閉める。
 ホーンドの方はカップに入っている土の中に潜ってしまっていたので。そこからホジリだして、そのままプラケに追い込む。なんだか少し元気がないように感じたが、それが私にとっては幸運だったのかもしれない。
 無事、2匹の移動を済ませた後、他の連中の世話をすること、2時間。もう一度タランチュラのケージを覗いてみると、さっそくウサンバラの方が巣を張っていた。これにはなんだか感動させられてしまった。
 しまちゃんが巣を作っている現場を見た時もそうだったのだが、なんだか、狂暴・有毒と恐れられている彼らが、そんなふうに身を守るための手段を密かにこうじているのが、とても可愛らしく思えるのだ。しかも、無茶苦茶地道に。
 ホーンドの方はプラケが小さすぎて土の量が足りなかったため、掘って頭だけは潜っているものの、お尻は地面にはみだしてしまっている。
 それぞれMコオロギを与えたが、ウサンバラの方は一気に2匹食べ、図らずもそのアグレッシブさを誇示する形となった。ホーンドの方は落ち着くことができないのか、餌を食べない。しかし、お腹が結構張っている感じなので、もしかすると脱皮かもしれない。まぁ、飼育開始当日では落ち着かないのだろうと思い、殺したコオロギを入れておき、あとはそっとしておくことにした。
 さっそくではあるが、ホーンドの方は「ツノくん」という名前になった。ツノくん、元気でやってくれるといいのだが。




脱皮後、元気の無いしまちゃん。


シェルターにも隠れない。狭すぎるのか?

3月16日(火)
 月曜の夜、仕事から帰ると、ウサンバラの巣がかなり出来上がりつつあった。出入口が二つあり、コルクシェルターの脇からも顔がだせるようになっている。
 ツノくんは相変わらず朝の体勢のまま動いた様子がない。脱皮をするにしても巣を張るんだろうと思い、しかし巣を張っていないので、やはり脱皮ではないのかも?と思い直し、帰りがけにプラケを買ってきたので、さっそく移動を開始した。
 まず購入してきた大き目のプラケにバーミキュライトをいれ、そのうえに腐葉土・黒土・ジャングルミックスをまぜた土をいれてセットし、しまちゃんを移動。やたらとデカい。……が、まだ脱皮してから日が浅いのでそれほど活発ではなく、こちらの誘導に従って問題なく移動してくれた。
 そして今度は、しまちゃんがいなくなったプラケから土を捨て、水洗いしてから、さらに土を入れ直してセットする。こちらは、バーミキュライトを使用せず、腐葉土とジャングルミックスを混ぜたものを厚めに敷き、その上に乾いたヤシガラ土を被せるようにした。


ホーンドの方は土を多目にしてみた。さっそく穴を掘り、巣を張った。

 適当なサイズのコルクシェルターがあったので、一応セットしておいた。これが良かったのか、移動後、なんだか元気のないツノくんはすぐにシェルターの下に隠れて、じっとしつつ、しかしだんだん落ち着きを取り戻しているようであった。
 それをセットしたのが9時頃で、その5時間後の深夜2時頃、また様子を見てみるとウサンバラは巣から脚を出して辺りの様子を伺い、ツノくんの方も一応カンタンな巣を張り終えて、出口の方に顔を向けて落ち着いた様子であった。


こちらはウサンバラである。かなりしっかりとした巣が張られている。


ホーンドに比べて糸の量が多い。シェルターの脇に穴を作っている。

 昨日Mコオロギ2匹を食べているウサンバラであったが、食べるならあげてもよいとGeneさんに教わったので、しまちゃんにやるついでもあり、ちょっとした好奇心も手伝ってLコオロギの小さめのを与えてみた。
 Lコを暴れさせて、巣の糸に触れさせる。すると、暗いシェルターの影から、オレンジ色の脚が飛び出たかと思った瞬間、Lサイズのコオロギは巣穴に引き込まれ、巣穴からはみ出ている部位だけがその運命を物語るかのように激しく痙攣して見えた。一瞬、コオロギが激しくもがくとウサンバラは身体を入れ替え、巣穴の奥にコオロギを押し込み、自分はお尻を巣穴の入口から出して本格的に毒を注入したようであった。
 シェルターの脇からコオロギの痙攣がしだいにおさまってゆくのが見えると、ウサンバラの動きにも緊張感がなくなった。
 感想としては、「良く食うなぁ……」であった。この食欲はしまちゃん以上かもしれない。
 続いてツノくんにも給餌を試みた。
 同じようにMコオロギを巣穴の入口に差し出した瞬間、霞むようなスピードで飛び掛かってきた。コオロギは暴れる暇もないうちに絶命したようであった。
 無事に食べてくれて、こちらとしては一安心である。
 しまちゃんにもLコオロギを与えたが、月曜の朝に与えた分をまだ抱えていたので、瞬間的には食べなかった。とりあえず頭を潰して入れておくことにした。
 火曜の朝になってみると、ウサンバラは小Lコを抱えて巣の外におり、覗いてもとくに臆することなく平然と食事を続けていた。
 ツノくんはMコオロギをほぼ平らげ、次の獲物を待つように巣穴に潜んでいる。
 しまちゃんの方は結局Lコオロギを食べておらず、新しいケージに巣を張り始めていた。タランチュラのこの辺が地道だなぁと私に思わせるのである。
 以前、Wild Skyで店長の松園さんと、我が衛生管理部長、そして私と河村さんとが他愛もない話をしている際、ちょうどまだタランチュラが飼えず、私が「タランチュラ飼いたい、飼いたい」と騒いでいるのを見て、松園さんが「タランチュラの世界」の著者である冨水さんと会った時の事をはなしてくれた。


向かって左から、しまちゃん、ツノくん、ウサンバラの順である。

 それによると、冨水さんは「タランチュラはプラケに土入れて、時々巣の隙間に餌入れて、それでお仕舞いのつまんない生き物だ」と言っていたそうなのだ。それはもちろん裏返しの意味で、それが楽しめないようなやつが興味本位でタランチュラに手を出して、すぐに飽きるといったような事態を防ごうとしての言葉だったのだろうと思う。
 しかし、今になってこそ私にも理解できるが、当時はかなり魅力を削がれたものであった。
 そのはずが、ウサンバラとホーンドのこの楽しさは何だろう?!
 色々考えてみると、それは当然「欲しがり」の私であるから、新しいものを手に入れた喜びと言うのが多分にあると思うのだが、それを6割として差し引いたとしても、4割は純粋に「楽しい・面白い」なのである。
 そしてそれは、今まではしまちゃんしかいなくて、ピンクトゥーも同様のツリースパイダーであったために、生態が非常に限定されていたのだと言うことに気がついた。
 あらたな生態の差異が私に4割り増しの楽しさを与えてくれているのである。
 みるかし姫さんの話だと、バブーンスパイダーは巣の張り方を楽しむことができるタランチュラだと言う。今後、スペースが許す限りそれが楽しめれば、いつかかえってその楽しみを独占したくなるかもしれない。
 そしたら私も不敵な笑みを浮かべつつ、「タランチュラなんて……」と、どっかの誰かに言うつもりでいる。




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