タランチュラの飼育日誌 vol.11 [2000年1月24日〜1月26日]



はるばる沖縄からやってきたメキシカンレッドニー。


1月24日(月)
 一昨日の土曜日、沖縄のトロピック・ファウナから3匹のタランチュラが到着した。
 その日の午前中、宅急便の車がくるまで、私はかなりやきもきしながら待っていた。当然、飼育部屋で「いつでも来い!」って感じで待っていたのである。到着時刻を午前10時頃とお願いしてあったので、9時45分ぐらいから待ち始め、そわそわしながらとりあえず世話の必要な連中を世話していた。
 しかし、いつまで待っても荷物は来ない。ホント、全然来ないのだ。
 いつまで待っても来ないので、10時30分を過ぎたころ、私は2階へ上がり1週間分たまったメールの返事を書いた。その時である、そのメールを送ったと同時に両生類MLの中西さんからメールが届いた。
 なんと、中西さんのところに届いたトロピック・ファウナのレッドニーが死着だったと言うのだ。
 中西さんのメールには、私の所はどうだったのか知りたいという旨が記されていたので、私は到着したらメールしますとレスをしておいた。
 そしてさらに待つこと1時間、ついにトロピック・ファウナからの荷物が届いた。それは予想していたよりかなり大きな箱だった。私は中西さんに死着の話を聞いていたので、それなりの覚悟をもって箱を開けた。
 中を見ると、段ボール箱の中にさらに発泡スチロールの箱が入っており、そのまわりに新聞紙の丸めたものとホカロンが入っていた。しかし、発泡スチロールの箱はまるでクール宅急便で送られてきたみたいに冷たい。やはり、真冬の通販は無理なのだろうか……という思いがよぎった。
 発泡スチロールの箱をあけると中にプラカップが二つと、ガラス試験管が一つ、ガムテープで固定されて入っていた。しかし、目に入ってきたのは裏返っている3匹の蜘蛛だった。
「全部、死んでる……」
 私はある程度予想していたので、それほどのショックは受けなかった。それに、死着ぐらい保証してくれるだろうとも思った。が、ブラジリアンレッドとグリーンボトルブルーはもう売り切れっだたのだ。……無念。
 とりあえずカップと試験管をスチロールの箱から取り出し、それらを飼育部屋の空いているアングルの中段に置いた。その日は天気が良く、気温は低いものの窓越しに指す陽射しは暖かだった。
 カップを開け、ひっくり返ったのを戻して見てみると、ブラジリアンレッドもグリーンボトルも可愛い盛りの大きさで、なんとも惜しい。
 ブラジリアンレッドは黒い頭胸部に赤い毛の生えた腹部を持っていて、フワフワした感じだ。グリーンボトルの方は我が家のゴクウよりも少し大きく、脚の色が変わっていた。レッドニーはまだ本当に小さく、頭胸部には毛が生えていないサイズだった。
 私は、3匹を陽当たりの良いそのアングルの上に置いて、暖めれば生き返るかも……と一縷の望みに賭け、しばらく見守ることにした。しかし、内心まさか生き返るだろうとは思ってなかったのだ。
 しかし、映画で起こる安易な奇跡みたいに、それは起こった。
 なんと、10分ほどでレッドニーが動き始めたのだ。
 最初、急激に暖めたため、単に温度変化の影響で脚が伸縮しているだけだと思っていたが、ひっくり返っていたレッドニーは何ごともなかったように「パッ!」と起き上がり歩き出したのだ! それは、凍った道で転んだOLが、何ごともなかったかのようにやり過ごそうとするのに似ていた。
 私は驚き、レッドニーの試験管を手にとって覗き込んだ。バーミュキュライトが散らばる試験管の中をレッドニーは所在なげにうろうろ歩き回り、やがて入っていたオアシスにしがみついて動きを止めた。どうやら自分が死んでいたことなど忘れたようだ。私はレッドニーの試験管をもう少し暖めようと、しばらくアングルの上に置いておくことにした。
 こうなると他の2匹にも希望が持てる。
 私は2匹のカップをもう一度開け、手にとってみた。ブラジリアンレッドはまだ柔らかい。しかし、グリーンボトルはすでにある程度硬くなっていた。「グリーンボトルは駄目だろうな……」私はそう確信した。
 それでもさらに2匹を暖めた。すると、20分近くもたったころ、ブラジリアンレッドが動き出した。ほんの少し、脚をパタパタ動かし始め、やがて2、3歩あるく。瀕死の状態ではあるが、死から復活したのだ。過ぎていく時間の中で諦めが大きくなっていた分、レッドニーの時より喜びは大きかった。
 2匹が動き出したので、私はケージを用意することにした。ガラス試験管に良い思いでがないので、レッドニーにはプラカップを、そしてブラジリアンレッドには当初プラケを用意したが、その後まるで動かない彼の状態を考慮して、こちらもやはりプラカップにした。


このまま順調に復活して欲しい。


 カップにはそれぞれ床材を入れ、湿度を高めにした。床材は黒土とピート、それを完全に水浸しにして少し落ち着かせてから、その上を乾いたヤシガラ土で覆い、さらに軽く霧吹きする。
 そのカップをガラス温室に入れ、暖める。そのままでは温度が低く、すぐにはタランチュラを入れられない。
 そのあいだにレッドニーとブラジリアンレッドに霧吹きをし、おなじくガラス温室に入れる。鳥の為にとは言え、こいつを購入しておいて本当に良かった。そして無理にでも飼育部屋で使用することにしておいて良かった。内部温度は現在30℃ある。復活したレッドニーとブラジリアンレッドにはもってこいの温度だろう。
 そこで取りあえず私は中西さんとトロピック・ファウナにメールをすることにした。
 中西さんには2匹が復活したと言う話を、トロピック・ファウナには死着保証の確認を。


 その後、2時間程の間、20分おきぐらいに様子を見たが、ついにグリーンボトルは復活しなかった。暑くなり過ぎる前にこちらも温室に入れたが、何時間経っても復活の兆しは見えなかった。
 そうこうするうちにトロピック・ファウナから電話があった。まさか電話をもらえるとは思っていなかったので、少々驚いたが、死着保証はしていただけると言うことで安心した。なにより対応がとても敏速でしかもその姿勢が丁寧だったので、死着による不快感はまるでなかった。
 ただ、グリーンボトルの命が失われたことだけが残念だった。
 最終的には、グリーンボトルがもう一回入荷したら連絡をもらい、春頃になって関東地方が暖かくなったら送ってもらうことにした。


 そして次の日の日曜日、レッドニーは完全に調子を取り戻し、活発に動いている。しかしまだ心配だったので観察を怠らないようにした。
 夜になるとブラジリアンレッドもかなり調子を取り戻したようだった。湿度を高めることを優先したので、すこしカップ内が蒸れている。これでは良くないと思い、小さなプラケを用意した。
 カップと同様に床材をセットし、枯れ葉でシェルター代わりにした。ブラジリアンレッドはカップからプラケに移すとすぐに枯れ葉の下に隠れたが、やがて一番湿気の多い壁面に張り付いていた。閉じ気味だった脚も完全に治り、動きもそれなりのスピードを取り戻した。当初、脚を引きずるような仕草を見せたので少し心配だったが、障害が残った様子はない。
 夜になり、Sサイズのコオロギを与えると恐る恐るではあるが食ってくれたのでとりあえず一安心できた。レッドニーには矢毒用に購入した初令コオロギを与えたが、すぐには食わないようだった。


 これで我が研究室のタランチュラはインディアンオーナメンタル×2、ウサンバラオレンジ、メキシカンブロンド、アンティルツリー、グリーンボトルブルー、メキシカンレッドニー、ブラジリアンレッドの8匹になった。
 みな、色々と思い入れのある個体達だ。


名前はイブに決定。オスになったら威武にするかな。


 レッドニーとブラジリアンレッドにはさっそく名前をつけようと思う。あんまり悩んでも良い名前にはならないので、レッドニーはsurviveからとってイブ、ブラジリアンレッドはブラジルからとってジルジルに決定。2匹とも健やかに育って欲しいものである。


コーンウェルの小説から「ブラジル」にしようかと思ったが、まんまなので却下。



 そしてついに、私のタラ熱は爆発した。遅ればせながら、みるかしさんの代行輸入便に参加させていただき、何匹かのタランチュラを手に入れてみようと思っている。
 まだ在庫確認が取れていないので、頼んだなかのどれが来るか解らないが、それも含めて非常に楽しみだ。
 しかしても、タランチュラの生命力には驚かされた。あんなになっても生き返るなんて、本当に驚きである。死んでしまった個体は非常に残念だが、それは言ってもしかたがない。やがてトロピック・ファウナから連絡が来るのをまとうと思う。
 それがやってくれば、別血統のグリーンボトルが2匹になり、ブリーディングの幅が広がる。
 そして次の狙いは、インディアンオーナメンタルだ。現在の2匹で雌雄が揃えばいいが、揃わない場合はもう何匹か手に入れようと思う。




脱皮後、数日経ったルーク。


1月26日(水)
 一昨日の晩、アンティルのルークが脱皮していた。プラケが小さく、巣もぼろぼろだったんで凄く窮屈そうだった。脱皮が近いと思い、水分補給を頻繁にしておいたのだが、それが良かったのかどうかとりあえず無事に脱いでくれた。
 そして今日、メキシカンブロンドのリサが脱皮をした。正確には、脱皮をしていたと記すべきだろうか。帰宅してすぐにタラ達のチェックをすると、リサが仰向けになって固まっていた。私はそれを見て凍り付いてしまった。脱皮不全で殺してしまったと思ったのだ。
 焦った私がプラケの蓋を開け、リサをつつくとリサは脚をグニャグニャと動かし反応したが、私にはそれが生きた反応なのか死んでいても起こる反応なのか判断できなかった。
 死んでいるのかどうか疑ったまま、とりあえず霧吹きをした。良く観察すると、腹部と頭部はすでに抜け、次に脚を抜こうと言う段階だった。やがてそっとしておくとリサは脚を波打たせながら脱皮を続けるようだった。そこまで見て初めて私はほっと一息付くことができた。その瞬間まで本当に死んでいると思っていたのだ。
 リサが無事なのを確認すると、急に欲がでて脱皮の写真を撮ろうと思い始めた。なんとも現金な話しではあるが。


撮影の準備をしている間に脚が随分抜けてしまった。




牙が白い。牙の周りの毛も薄いピンク色だ。




ほぼ完全に脚が抜けた。とりあえず一安心。




まだモゾモゾ動き続けるが、自分が乗っかっているのでこれ以上殻が動かない。




ピンセットで身体の向きを変えてやると、すぐに脱皮が終了した。
身体の下に殻が見える。


 そうして写真を撮っているあいだもリサは懸命に身体を収縮させ、脚を古い殻から抜こうと必死だった。初めて目の当りにするタランチュラの脱皮は、「神秘的」とかそんなものじゃなく、随分実質的で、身近な感じだった。おおよそ、人間とはかけ離れた生物と言う認識のあるタランチュラであるが、こと「生きる」為のもがきみたいなものが、生物として非常に共感できたのだ。
 先日、レッドニーとブラジリアンレッドが復活した時にも感じたそれは、すごくストレートな「生きる」という感覚だった。人間は時に感情が勝って死んでしまいたいとか思うこともあるが、肉体はその時ですら生きようと頑張っているのであって、「生きる」というシステムが崩壊するまで死を認めたり、ましてや望んだりはしない。
 タランチュラの脱皮を見ていて、ふとそんなことをいつも考えていたころを思い出してしまった。
 その後、あまり写真はよく撮れなかったが、リサの脱ぎ立て脱皮殻を採取することができ、はっきりと雌雄鑑定することができた。見るからに雄という特徴を持ってはいるものの、やはり確実な証拠が欲しかったのだ。


脱ぎ終わると同時に採取したので、腹部も原形のままだ。


 脱ぎ立ての脱皮殻の腹部を広げ、左右の書肺のあいだに裂け目がないかチェックする。そしてやはり、そこに裂け目はなかった。これではっきりとリサは雄だということが分かった。


外側からの写真。円内が、メスであれば外雌器のあるべき場所だ。




内側から見ても外雌器の入り口は無い。




それにしてもこの構造。物凄くメカっぽい。


 リサの脱皮を目のあたりにする前、会社が終ってから私はマウスを買いにハチクラへ行った。そこで、メキシカンブロンドのアダルト雌個体が売られているのを見つけた。値段はなんと35,000円だ。ちょっと手が出ない。
 リサが雄であるとハッキリした以上、雌の確保は必須であり急務だ。本当は、鶏冠さんのメキシカンブロンドが雌っぽいので、その個体とブリーディングしようと計画していたのだが、その雌が間に合いそうにもないと鶏冠さんから連絡があったのである。となると、できるなら自分で雌を手に入れ、自家繁殖させてみたいという希望もむくむくと首をもたげてくると言うものだ。
 ハチクラが35,000円、そしてネットでみつけたメキシカンブロンドはアダルト22,000円が最安値であった。近い内にそのネットの店にメールで連絡を取り、その個体が雌であることが確認できれば、そちらを手に入れようかとも思っている。


 今、ブラジリアンレッドのジルジルが最高に面白い。なにがこいつをこれほどまでに飢えさせているのかしらないが、とてつもなく食べるのだ。
 到着の翌日から毎朝晩Mサイズコオロギを3、4匹ずつ食っている。そして、小さかった腹がガンガンに膨らんでいっている。しかし、やつの飢えは満たされることなく、落としたら落としただけのコオロギをホールドしてしまう。たとえ最初にホールドした1、2匹逃げてしまったとしても、全部に噛み付くのだ。しかし、かといってデカいコオロギにはビビって手をださないのが面白い。
 さらに、昨日あたりから腹部に模様が現れた。ほとんど真っ黒に近い地色にこれまた黒に近い赤で模様が入っている。4色データで言うと、地色がC50+M100+Y100+BL70で、模様がC30+M100+Y100+BL50ぐらいだ。この模様が名前の由来だろうか? 確かに赤いと言えば赤いが。とはいえ、脱皮すればまた違った色になるかも知れない。現在の食欲を見ると、まだ脱皮は先のようだが、これだけ食い気があると今まで我が家にいた連中はなんだったのか?って感じがする。


 ジルジルと同じ日にやってきたレッドニーのイブは、あれから餌を食べない。元気に動き回っているので問題はないと思うが、ガラス温室内の湿度は最低で30%ほどになることもあるので、水切れだけには気を付けている。次の餌やりは今度の土曜日だ。
 同じ温室内にうーさんも入っているが、うーさんは温度が高くなったので調子が良くなりバンバン餌を食べている。壊れかけていた巣も直したようだ。そろそろ一度ケージ内の物を全て取り出し、掃除をしなくてはならないだろう。




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