飼育日誌 vol.01 [1998年1月3日〜1月25日]



INTRODUCTION...
1998年1月2日 〜矢毒ガエルの世界に出会った日〜


 それはある一冊の雑誌を、私が手にしたことから始まったのでした。
 1998年1月、せわしなく過ぎ去った97年を振り返ることもなく、年が明けたこの頃、  私は以前から気になっていた、ピーシーズ・マガジン「アクア・ウェーブ」を、 ほんの暇潰しに寄ったいきつけの熱帯魚店で入手したのでした。

特集「アクアの夢中人」

 広告のデザインなんぞを生業としている私は、既刊の「アロワナ」や「古代魚」 等に見られるくらくらするような目映いデザインに、半ば魅了されながら、 その見出しに興味を憶えたのでありました。
 「跳ねる宝石 ヤドクガエル」
 ヤドクガエル……頭の中で繰り返してみても、なんと危険で、魅惑的なひびきであることか!
早速家へとかえり、ページを手繰ると、そこには見たこともない、そして考えたこともない、 「美しくて」「危険な」蛙たちが、その世界が広がっていたのです。
 まさに、「ヤドク」 「ガエル」。この響きに間違いのない衝撃的な存在達が。
 時を同じくして、「フィッシュマガジン」でもヤドクガエルの特集が組まれていました。 私は貪るようにして情報を取り込み、そして一つの危惧を抱いて、心の中にヤドク飼育の夢 をはせていったのです。
その危惧とは、ずばり「エサ」のことでした。今となっては振り返るのも恥かしい、 人工飼料でのヤドク飼育に、私は一縷の望をかけて、特集ページに載っている ヤドクガエルショップの「Wild Sky」へと車を走らせたのでした。




ここがWild-Skyだ。
【Wild-Sky Shop review】へ行く


1998年1月3日 〜Wild-Skyにて〜

 店構えは今流行りの「ガーデニング」のお店といった感じでしたが、私は、 入ったらただでは出てこられなさそうな雰囲気を過敏に察知しました。 しかし、それももう慣れっこでした。そんな熱帯魚ショップも多々ありますし。
 ほとんど躊躇もなく店内に入ると、目の前にガラスのビバリウムケースがあり、 その奥にはズラっと観用植物、そして両脇に露に曇ったガラスケースが見える。
 その中には、あの、写真で見た美しい蛙たちがいたのです。
 一発で、まさにひと目で、私はもう、心に決めてしまったのでした。「ヤドクを飼おう」と。
 私がそうやってケースに近づくが早いか、背後から声をかけてくれたのがはやいか、 それは店長の松園さんでした。
 松園さんは件の両雑誌に特集がくまれてから訪れる こういった人間には慣れっこのようすで、にっこりと笑っていうのです。
「ヤドクは難しくないですよ。ちゃんと世話さえすれば」と。
 私は世話に手間をかけるのは厭わない方なのですが、 手をかけすぎて殺してしまったりする方でした。しかし、それはさておき、 絶対に訊いておかなければならないことがあったのです。
「ハエしか食べないんですか? 人工飼料じゃだめですか」

「だめ、生き餌しか食わない」

この時の松園さんは、怒ってもいないし、呆れてもいない。 ただ、さっきと同じ笑顔のままで、あたりまえの事といった ふうに、あくまでさらりと……それがまさに、こっちとしては「トドメ」といった感じでした。





1月某日
 この前は茫然としながらも苦笑いでお茶を濁し、早々と店を辞した私は、確か4、5日あとになって、 イグアナを飼っている友人を伴い、もう一度Wild Skyを訪れたのです。
 この前より幾分落ちついて店内をくまなく見て歩き、どのケースの蛙も見逃すまいと目を こらしていると、松園さんが、また声をかけてくれました。
「熱帯魚の水槽余ってないですか」
「いえ、それがもう、いっぱい余ってるんですよ」
「いいですねぇ……」
 そんな会話を交わしている目の前で蛙に餌をやられては……まったくこれが生体販売の 常套手段という奴ですよ。
 いい歳した男二人が、ハエを食ってる蛙を見て大喜び。「おお、食ってるよ、食ってるよ」 そりゃ、食うって、腹へってんだろうから。
 それから私は、また松園さんに話しかけたのです。
「ハエがやなんですよ」
「そう、ハエがねぇ……ハエさえなけりゃねぇ」
 友人と二人で情けない声をだす私に、松園さんはハエの扱いを丁寧にレクチャーしてくれました。

 そして、あぁ……、なんという単純バカ! ものの5分で、私は「ハエ楽勝!」と確信したのでありました。 それはまさに、ウリナリの藤崎奈々子のような、「ふわぁ〜い」。そう、なんとも根拠のない自信だったのです。
 しかしあの、松園さんの簡単ハエレクチャー「キミも明日からハエ名人」がなければ、 私の矢毒飼育は永遠の夢のままに終わっていた事でしょう。
「よし、今度来る時はお金持ってきます」
 一通りの解説を受け、すっかり鼻息を荒くして、アホウな台詞を残し走りさる私を、松園さんはどんな気持ちで見送っていたのでしょうか?  トホホ……。

1月15日(水)
 郵便貯金全額引き下ろし。
 一大矢毒プロジェクト発動。
 部屋には新しいアングルが置かれ、空になった45?のアクリル水槽と、エーハイムフィルターが用意される。 元からそこにいた住人たちは急造のアクアリウムに移され、まさに私の部屋はやりすぎの熱帯魚屋のよう。

1月17日(金)
 矢毒蛙のためにビバリウムの計画を練り、予算を算出し、某ホームセンターにて必要な物を 買い入れる。折悪く、熱帯魚用のヒーターとサーモのセットが三つも駄目になり、 新たな矢毒蛙用のヒーター&サーモセットと共に購入。ニッソーの製品でセット価格がたしか 3,000円程度(激安! 前回買ったのはきっと5年も前だろうから、この価格には驚きだ)。 しかし、熱帯魚屋ならいざしらず、ホームセンターで塩ビ板やらパイプやらと一緒に4つも同じ ヒーター&サーモを買う人間を、レジのおばさんはどんな気持ちで見るのだろうか?


1月18日(土)
 Wild Skyを訪れ、ビバリウムの用品を買い入れる。ド素人らしさ満点で植物と軽石などを注文し、 餌用になるハエとハエ培養キットを購入。そして主役のヤドクガエルを選ぶ。
 ついに、あの「ヤドクガエル」が手に入るのだ。
 私が選んだのは、Dendrobates ventrimaculatus
「ヴェ、ヴェントリ……?」頭の中にはO.ヴェントラリス・オレンジカップの想い出が蘇ってくる。
 蛙はひとまず売約にして貰っておき、さっそく家に帰ってビバリウムのセット。Macにて作成した 計画書兼設計書と睨み合いながら12時間もかかってやっとこ完成。上げ底用のパンチボード製作に 思いのほか手間どり、そのうえアクアソイルが足りなくなって9時閉店の熱帯魚店に15分待って 貰って買いにいく始末。4人もいる店員の目はちょっと迷惑そうでした。

1月24日(金)
 ついにヤドクガエルを購入!
 D.ventrimaculatusを、2匹。1匹はお店で既に鳴いているとの事。期待は真夏の積乱雲のように急上昇。
 家に帰ってカエルをビバリウムに放す。緊張と快感の一瞬。それは最高の出来の絵を描き終わったかの様な すっきりとした気持ちよさ。眺めているだけであっという間に時間が過ぎ、カエルのためを思って6時消灯。

1月25日(土)
 目の前でカエルが脱走。フタを改めて強化。
 痩せている方が、時折鳴き声を上げる。同時に私の心拍数も上がっていたことだろう。
 ハエをいくらやっても目の前では食わない。とりあえず大目にやって、そっとしておく。
 今日も「あっ」という間に時間は過ぎてゆき、6時に消灯。長時間おなじ姿勢で観察をしていたために肩が 岩のようにこってしまった。
 カエルはショップにいた時よりも少し色が飛んでしまったようにも見えるが、 それは私の心配性が見せる幻覚か?



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