ヘビの飼育日誌 vol.05 [1999年3月17日〜6月3日]
……やまちゃん。
3月17日(水)
カプアスに一度引き取ってもらい、給餌が成功したのを機に、我が家に戻ってきたやまちゃんであるが、日曜日に給餌したところ問題無く食ってくれた。しかし喜んだのもつかの間、翌日にはまた吐いてしまった。
このままでは吐き癖がついてしまって非常にヤバいとは思うのだが、どうしようもない。
吐き出してしまった要因としては、不十分な解凍と、給餌後やまちゃんのケージのうえにタランチュラのプラケを二つもおいてガタガタさせ、落ち着かなくなってしまった、などが考えられる。
今夜もう一度餌を与えてみようと思うが、なんとか吐かないでくれと祈るばかりである。
3月24日(水)
昨夜、蛇達の給餌を行った。当然ではあるが、やまちゃんにも給餌した。
結果は、「◯」である。しっかりと食べてくれた。しかも今朝、吐いている様子はなかった。このまま吐かずに居てくれれば一安心なのだが。
今回はSピンクではなく、ただのピンクだったのでいつもよりサイズ的に多少大きく、これでは食べないかな?と思わせたのだが、意外なほどあっさりと食らい付き、飲み込んでくれた。
最初は鼻先でつついてそっぽを向いていたやまちゃんであったが、その後スルスルと近づいてきて、「カッ!!」と口を開きマウスの頭を狙って噛み付く。その姿を見た時、思わず安堵の溜め息を深くついてしまった。
深夜の飼育部屋、潰れたコオロギの散乱するフローリングの床に沁み入るような溜め息を。
私はこれから帰宅する訳だが、今夜と明日朝吐いていなければもう安全だろう。なんとか吐かずに乗り越えてもらいたい。
ジゴロ、鼻の頭を擦っている。
●ジゴロ(L.g.nigritus)
脱皮不良だったのか、頬より少し後ろの、人間で言えば首から咽、肩口の辺りにかけて鱗に半透明のカバーがかかってしまったようになっている。次の脱皮でとれると良いが、はたしてコレが脱いだ皮の名残りなのかどうかも解らない。
●しろてん(L.g.californiae)
最近はガブガブ病が怖くて、ハンドリングもしていない。昨日脱皮したようであるが、餌をやりおえるまで手がだせないし、やった直後も興奮状態でとても手がだせた状態ではなかった。しょうがなく、水替えと掃除は今夜に持ち越しである。
体長70cmを越えていると思われるしろてんとお嬢についてはそろそろこのプラケケージでは狭くなってきた。この辺のストレスが、ガブガブ病発症の原因の一つかも知れない。早いとこケージを考えなくては。
お嬢としろてん、ここに妙な符合がある。この2個体は雌なのだ。飼育開始時期の差異もあるだろうが、雌の方が成長が早いものなのかも知れない。そして、もしかしたら大きくなるものなのかも知れない。このテキストを書いている状態では手元に資料がないので確かめられないが、後で調べてみようと思う。
にこたん、ヤル気まんまん。
カメラを追いかけているのか、それとも進む先にカメラがあるのか。
●にこたん(L.g.californiae)
にこたんも昨日脱皮した。驚くぐらい小さな抜け殻だ。ホントに笑ってしまう。
やまちゃんよりずっと食いの良いにこたんには毎回2匹ずつのピンクを与えている。餌を大量に与え早く大きくすると急成長の弊害が出ると聞いているが、今は漠然とこのペースで与えてしまっている。
なにが良くないのか、明確な理由を突き止めないのは不徳のいたすところではあるが、情報を採集すると言うのは案外手間なものであり、苦労するものなのである。今度、ヤフーの掲示板で聞いてみよう。
もう最近は、暴れてもいいから、掴んでます。
●お嬢(L.c.calligaster)
次回の給餌から、お嬢としろてんにはホッパーを与えてみようと思っている。私自身、いまひとつホッパーのサイズを認識できていないのだが、40cm後半のサイズからずっとファジーを食べている彼女等にとって、ホッパーなどさほど大きく感じられないのではないか、と言うのが私の予想だ。
お嬢については肌の色つやも良く、元気だ。餌も良く食べ、排泄、脱皮も順調である。今後の問題としてはどの個体と繁殖させるか?と言う事になってくるのだが、私はまだそこまで現実的に考えられずにいる、というのが実状である。
ポンチョ、なんだか日差しが似合う男(笑)。
●ポンチョ(L.mexicana)
ポンチョに関しての読み、について私は間違っていなかったようだ。彼はいつもマイペースで特に取り乱す事もない。
給餌時も、ハンドリング時もほぼいつものテンションを保ち、しろてんやお嬢のような「恐怖」をこちらに抱かせる事はまずない。
もしかしたら、これも雌雄の差異なのか?と疑いたくなるが、果たしてどうなのだろうか?
●やまちゃん(L.p.pyromelana?)
今一番心配なのがいうまでもなくこのやまちゃんだ。
今は昨日食べたピンクを吐かないでくれる事を祈るばかりである。
他のことはまるで考えつかない。
3月25日(木)
やまちゃんは結局また吐いてしまった。しかし今度は多少消化されているように見える。後日排出された糞にも多少、尿素だけでは無いような感じが見受けられた。
なんで吐いてしまうのか色々考えた結果、餌がデカイのでは?との思いに突き当たった。Yahoo!掲示板でもそのように指摘され、今度の給餌ではピンクを刻んで与えてみようと思う。
3月29日(月)
やまちゃんに刻みピンクを与えたが食べない。まだ前回のショックから立ち直っていないのだろうか?
カプアスの店長に相談してみたところ、餌を与えた後ケージを暗くしてやるといいそうだ。次はこれを試してみようと思う。
4月6日(火)
4日の日曜日にやまちゃんがSピンクを食ってくれた。前回の感じから、刻みピンクは嫌いみたいだと思ったので、できるだけ小さなSピンクを選んだ。
Sピンクをとにかく良くあっためてやまちゃんに与える。
土曜の昼間に入れたシェルター(巣箱)の中でやまちゃんは落着きをえたのだろうか、その巣箱の中にSピンクを入れると、ほどなく食べてくれたのだ。
私がぼやっと他の連中に餌をやって、それを眺めているあいだに。
あれから2日経つが、シェルターの外で吐いている様子は無い。中に吐かれていたらそれまでだが、いまは巣箱をあける事などせず、静かに見守ろうと思っている。
なんとか順調に消化して欲しい。
ここ何日かで、カバヴーが脱皮した。ジゴロももうすぐ脱皮しそうだ。ジゴロの方は頭頂部にオデキのようなものができてしまっているので、治ってくれる事を祈っている。
しろてんのがぶがぶ病が治らない。床材を替えるのにもびくびくしながらやっている状態だ。何をどうすれば治るのかそれこそ解らない。
4月26日(月)
先日、やまちゃんの餌食いが良かったので、調子にのってSピンクをいっぺんに2匹与えたら、吐かれてしまった。これはまったく申し訳ないことをしてしまった。少しずつ、着実に行かねばならないとあらためて痛感した。
最近はとりあえず口を使ってくれるので、拒食の難は脱したようで、一安心している。これでぐんと太くなってくれれば、さらに安心できるのだが……だが、焦りは禁物なのである。
ジゴロの頭頂部のオデキは脱皮によって完治した。これは大事に至らなくて本当に良かったと思っている。
先日、瀬山さんと関根さんが我が家にいらして、うちの蛇たちも見ていかれたのだが、関根さんがお嬢を見てなかなか良い蛇だと言ってくださった。ただ、このまま太らしてしまうと、肥満により繁殖に使えない個体になってしまうので、この一年で少し絞った方が良いとのアドバイスを頂いた。
これは常々私も思っていたことなので、これを機に、オニのダイエット作戦を敢行することにした。お嬢には少々可哀相であるが、丈夫な赤ちゃんを産むために頑張ってもらうしかあるまい。
来年の今頃は、繁殖日記を書けるといいのだが。
この画を見て、感傷的になる身勝手さ……。
5月6日(木)
昨日、やまちゃんが死んでしまった。
悲しい。
これ以外に言葉がない。
小さな死体を目の当たりにした時、ただ、悲しかった。
あの、Sピンクを2匹与えた日、あの日が運命の分かれ目だった。
4月26日の月曜日、前の日に与えた2匹のSピンクを吐かれてしまった。中5日おいて、5月2日の日曜日にSピンクを与えようとしたところ、全く反応せず、いやがって巣箱に入ってしまった。次の日の月曜日、今度は刻んだSピンクを与えようとしたが、刻みは嫌なのか見向きもしない。
1日あけて5月5日の水曜日、Sピンクを解凍し、与えようとしたところ、やまちゃんはもう逝ってしまっていた。
小さな身体を丸め、自分の身体に噛み付いたまま。苦しくて逃げ出したくて自殺してしまったかのような格好で。
なにをやっているんだろう、私は。
5月21日(金)
飼育欲が薄れている。「意欲」ではなく、「欲」が。
なんだかなんにもやる気がしない。
5月病か?
デカさがわかる写真。
5月30日(日)
今日は、3段式の衣装ケースを買ってきて、そこにしろてんとお嬢とポンチョを移した。これで、ケージサイズとしては格段に大きくなったと言う訳だ。
移動した蛇の方は見ている限りそれほど動き回っている様子もないが、まぁ、小さなケージよりは運動不足を解消できるだろうと考えている。
幅40cm×奥70cm×高さ35cm程度の衣装ケースにドリルで空気穴を開けただけの代物だが、キャスターもついており室内での移動も簡単だ。
もちろんこのケージは一時的なもので、いずれは鶏冠さんと専用ケージを造る予定である。
その予備的検証と言う意味でも、この手の改造ケージを使用してみるのもいいだろうと考え、使用に至ったのだが、しろてんがさっそく脱走してしまった。その際に無理矢理隙間を抜けたものだから、鼻と頭と背中を擦って傷がついてしまった。多分、脱皮で治る程度のものだと思う。
一番上の段は隙間が大きいのかと判断し、しろてんを一番下の段へ移し、お嬢を上の段に入れた。この状態にして2日間脱走は起こっていない。
カバヴーもデカい。
6月3日(木)
カバヴーが脱皮した。2、3日前からあまり動かなくなり、その前に目が曇っていたのもの観察していたので脱皮が近いだろうとは思っていたが、まさかこんなに早く脱皮するとは思わなかった。
他の連中はだいたい順調だ。しろてんとお嬢につづき、衣装ケースに移動したポンチョも今度の給餌からホッパーを使おうと決めた。この3匹は毎週日曜日に給餌し、ジゴロ、カバヴー、にこたんは毎週水曜日あたりにして、一回のマウス解凍量を減らす計画である。
この、週2回給餌実行の良いところは、こまめにマウスを与えなくてはいけない連中の世話をめんどくさがらなくて済むという点だ。なんとも言い訳のしようがない「良いところ」ではあるが、ピンクマウス1匹だけ解凍なんて、面倒臭くてかなわない。かといって、1回にマウス20匹解凍もこれまた時間がかかってたまらないのだ。そう、飼い主の快適さなくして、円滑な飼育作業は継続不可能なのである。なにせ私はズボラなのだから。
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