飼育日誌 vol.10 [1998年5月24日〜6月6日]




活発な雄ガエル。

5月24日(日)
 今日、早速雄ガエルが鳴いていた。雌は恥じらうように雄から逃げている。
 まさか、ビバリウムに入れた次の日から鳴き始めるとは思いもよらなかったので、 喜びよりも驚きの方が大きい。
 まだ、熱烈な求愛行動まではいたっていないが、ハンサムな雄のことであるから、 いずれイタリアン・ジゴロのような手腕を見せてくれる事と思う。
 見習わなくては。……なにを?
 まだまだ雄が鳴き始めたばかりで、第一段階といった感じである。人間でいうと 声をかけて一緒にお茶でも飲んだくらいだろうか?
 雄は雌を見つけると鳴きながら近づき、雌が逃げてもあまりしつこくおいかけは しない。前の雄はもっとしつこかったように思うのだが、それもだんだん変わって いくものなのかもしれない。
 雄も雌も、次第にそういう雰囲気になっていくものなのだろう。しかしそう思う と自然下ではどうなのだろうか? 一夜で決着がついてしまうものでは無いのだ ろうか? それとも何日かペアを維持しているものなのだろうか? 疑問は尽き ないのだが、そんなことを解明できるわけも無く。しかし、その知識と、日本で の飼育では全く違うものなのだから、私の日誌は、日誌なりの意味があるものと 思っている。……思っているのは私だけだったりして?



ビバリウムを満喫してますな……。

5月25日(月)
 仔ガエルの補食を久しぶりに見る事が出来た。活発に動き回り、ハエを食べ ている。はやく大きくなって欲しいものだ。そうなると次はこいつのお嫁さ んなり、お婿さんを探さなくてはならない。まぁ、すぐに成熟する訳では無 いので、焦ってもしょうがないのであるが。
 岡田さんの雄ガエルは、懸命に雌を誘っている。雌もまんざらでもないのか、 同じグズマニアの葉に乗ったりしている。
 いけない恋の始まりである。


この上の方に雌がいます。

「奥さん、何も怖がる事はありませんよ……さぁ、こちらへ」
「いいえ、私には、まだあの人の事が……」
「奥さん、僕が全部忘れさせてあげますよ……」
「……」
 なんて、会話がなされているわけないのだが、なんだか危険な情事を覗いて いる家政婦の気分である。
 柱の影から、そーっと覗きながら、「家政婦は見た」の気分で観察を続け る事にしよう。



ビバリウム内をくまなく探索。

5月29日(金)
 雄ガエルは引き続き鳴いている。鳴き方は前の雄と同じく、背中をへこま せて絞り出すように「ヂィー、ヂィー」と断続的に鳴くやり方なのだが、 その声の大きさに差があるようだ。
 前の雄の方が身体は小さかったのだが、鳴き声は大きかった。これも、 まだ求愛の初期段階だからなのかもしれないし、個体によって差があるの かもしれない。そんな違いがあるのもまた面白い。
 雌は雄の存在にも慣れ、誘われれば近づくようになった。このまま順調に産 卵してくれるといいのだが。



こんなに、大きくなって……って、どこいくねん!!

5月30日(土)
 今朝、上の写真を撮影していたら、仔ガエルに脱走されてしまった。大変焦 った。部屋の窓側に矢毒用ビバリウムのアングルが有り、その下に逃げ込まれ てしまった時にはもう終わったかと思った程だ。
 その時、気が動転し混乱した私は、何を考えたのかその窓を開けてしまっ た。今思うと恐ろしい事だが、窓を開けてから庭先に回り、アングルの後ろを 探した訳だが、この時に外へ逃げられていたら、それこそ見つかる見込はゼロ なのだ。
 アングルの後ろ、下、と探しても仔ガエルの姿は見つからず、何というバカ なことをしたものかと、後悔ばかりが頭で渦巻いた。
 HP公開用写真の撮影の為に、研究目標である生物に逃げられて見失ったとあ っては、まったくもって本末転倒というものである。
 どうやって、いままでお世話になった皆さんに言い訳しようか? いっそ死 んでしまった事にしようか? などと卑怯な事を考えながら、もう一度部屋に 戻り、アングルの下を覗くも、結局仔ガエルは見つからず、さらにもう一度庭 へ戻ってケージの後ろをくまなく探す。
「居ない……」
 私が絶望しているその瞬間、部屋の中でアングルの下を覗き続けていた衛生部 長から声が上がった!!
「そこっ!! 下っ!! 下っ!!」
「へっ?!」
 慌てて気を取り戻した私が、言われて下を見ると、なんと、そこに小さく輝 く仔ガエル姿が。
 アルミサッシのレールの上に、ちょこんと座っているではないか!!
「うおっ!!」
 あと10秒発見が遅かったら、庭の草むらに逃げ込まれて一貫の終わりであ ったろう。
 しかし、ほっと気を抜いた私の目の前で、仔ガエルは庭にジャンプ!!
 一難去ってまた一難。
「マズイ!!」
 必死になって草をかき分け、何度か見失いながらもなんとか仔ガエルを保 護。10分ほどの逃避行を終え、仔ガエルはもとのプラケへと帰ってきたので あった。
 なんとも疲れる朝であった。よくよく言われていたことではあったが、ヤド ク蛙がこんなにすばしこいものだとは思わなかった。仔ガエルともなれば 見つける事は更に困難で、今回は本当にラッキーだっ たとしか言えないだろう。以後、気を引き締めなければならない。
 のちの衛生部長曰く、「なんだか、背筋をピンと伸ばして雄々しかったよ」
 そんな呑気な事を言っている場合では無い。……しかし、部長のおかげで 助かったので何も言えないのである。とにかくテンヤワンヤな朝であった。


仲良く二匹で食事。向かって左が雌、右が雄。

 雄ガエルの調子は良好で、一安心している。餌も良く食べ、物おじしないの で、雄につられて雌も人前に出て餌を食べるようになった。
 二匹の中の良いショットを見て欲しい。なかなか睦まじい光景である。
 雌が出てくると雄は気が気で無いらしく、ハエを狩る動作もぎこちなくなり、
ついには食べるのを中断して鳴き出してしまう。
 これまた男の哀しい性なのだろう。……共感。
 まぁ、隣に裸の女がいたらメシどころでなくなるのはしょうがないことだと、 内心想像してしまった。
 頑張れ雄ガエル。



太ってきた雄ガエル。


餌を探す。


とことん探す。

6月4日(木)
 今日、Wild Skyに蛙の入荷があった。待望の入荷である。本来なら「ワァー!!」 と飛びつきたいところなのだが、いかんせん資金的余裕が無い。蛇室開設のため の資金流出という実質上のダメージもさる事ながら、秋に控える研究所移転のた めに、今はビバリウムを新設できる時期ではないのだった。
 言葉は悪いが、私は売れ残りに期待するしかないようだ。
 雄ガエルと雌ガエルは、膠着状態で進展なし。仔ガエルは次第に成長しつつあ り、もうすぐ親ガエルと一緒に入れられそうである。



ビバリウムに矢毒蛙。見ているだけで本当は幸せ。

6月5日(金)
 夜遅くにWild Skyに蛙を見に行った。ヤドクは6種の入荷があり、そのうち2種 が日本発入荷だということだった。さっそく色々見させてもらう。
 良い! 良いんだけど辛い!!
 D.ventrimaculatusのGold、そしてD.variabilis、どちらも欲しい。そして、 E.bassleri という、こちらも日本初入荷の物凄く魅力的な蛙。 背中の「ブツブツ」した感じが私の心を刺激した。しかしどうあが いてみても資金はない。
「お金貯めといてよ、蛙はまたはいるから」と、松園さんに言われながら、私 は蛙を見ている事しか出来ないのだった。


ちょっとたそがれている雄ガエル。

 あと、レッド&ブラックウォーキングという蛙も見てきたのだが、こいつはビ バガの創刊号に載っている、コガタナゾガエルのようだ。
 松園さんと奥さんが「触ると、手がピリピリするよ」と薦めてくれたので、恐 る恐る触ってみるが、まるで何とも無し。これでは埒があかないので「むんず」 と掴んで手のひらに乗っけてみるが、いくら経っても何にも感じなかった。私の 皮膚が強いのか、それとも毒を出していないのか、結局解らなかったが、実験の 結果としては寂しい限りの結果となった。私としては「すごく手がピリピリして、 二度と触ろうとは思わなかった」ぐらい書いて、みんなに「さすが有毒部の部長 だ、体をはっている」と尊敬されるチャンスだったのに。
 惜しい事をしたものである。



つられて出てきた、デブデブの雌ガエル。

6月6日(土)
 今日はカエルの日らしい。
 それはさておき、今朝の事である。仔ガエルに餌をやろうと思い、プラケの蓋 を取り、いつもの通り仔ガエルの様子を見ようとした瞬間。
「あっ!!」っと言う間に逃げられてしまったのだ。
「くそっ、まただ!!」と自分を罵ってみても、逃げた蛙は戻らない。しかも、 今回は本当に一瞬の出来事で、仔ガエルがどこに逃げ込んだかさえ分からない のだ。
  とりあえず、方向的に隠れていそうなアングルの下を覗いてみるも、まったく 痕跡というものも無く、姿も見えない。
 体長10mmの蛙など、そうそう見つかるものでもないのだ。……などとふてく されていても仕方が無い。今日に限っては当研究所衛生管理部長も不在のため、 ここからは本当に一瞬も気を抜く事ができない。
 仔ガエルが扉付近にいない事を確認してから部屋を出、庭の方に回って雨戸 を開けた。部屋に戻って今度は「そぉー」っとカーテンを開ける。すると、アル ミサッシのレールの上に仔ガエルがいた。
 しかし、とりあえず発見できたものの、ちょっとした刺激でどこへ逃げ込ん でしまうか分からない。細心の注意をはらっておびき出し、何とか保護。
「ふぅ〜」
 汗だくの作業であった。まさに「奇跡は二度起こった」というほか無く、仔 ガエルの飼育をなさっている方は、その逃亡にも気をつけられたい。


雌ガエルをよそにハエを探す雄ガエル。

 親ガエルの方は気候のせいか、あまり活発でなくなってきたようだ。雄ガエル もあまり鳴かなくなってしまった。
 雄ガエルがビバリウム前面に出て、良く餌を捕っているのが観察できるが、そ れにつられるように雌ガエルが出てくるのが面白い。おかげで久しぶりに雌ガ エルの撮影に成功した。しかし、カメラを向けるとあっという間にビバリウム の奥に消えてしまうので、シャッターチャンスは一瞬である。




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